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 TS社が手がけていた新規メディアは、「i-dio」という地上波デジタル放送兼インターネットラジオ。
専用の携帯端末や車載型の受信機で移動しながらでも情報が入手できることがセールスポイントで、高音質で映像や文字も楽しめる新しいメディアだ。
2013年3月にエフエム東京が公表した資料には、「ラジオを活性化し、ひいてはラジオの価値向上につながっていくことが期待されます」という意気込みが記されている。
 その後、エフエム東京の関連会社が基地局開設や放送事業に必要な認可を総務省から取得し、TS社は番組企画や制作を担う形で2016年3月から放送を開始。
エフエム東京がi-dio事業に投じた金額は債務保証なども含めて約100億円にのぼる。
 売上高185億円、総資産400億円弱(いずれも2018年3月期)のエフエム東京にとって社運を賭けたi-dio事業だが、TS社の赤字は徐々に膨らんでいった。
2018年3月期には債務超過に転落、2019年3月期にその額は4.5億円に拡大した。

■動機は事業見直しと経営責任の回避
 報告書によれば、i-dio事業の経営悪化が取締役や株主などに明らかになると、撤退を含めたi-dio事業の抜本的な見直しと経営陣の責任が問われかねないため、これを回避する動機があったようだ。
 i-dio事業はどの程度厳しい状況なのか。黒坂社長は「正直、状況が厳しいという現実はある」と述べるにとどまった。
ただ、i-dioを放送波で利用するためには専用端末が必要で、インターネットコンテンツが台頭する中、専用端末の普及は進んでいないとみられる。

その2