妻にかわいそうだと言われた私はアパートを出る日になりました、何がかわいそうだったのか自分で何度考えても分かりませんでした、
妻が言うには「お金はもうどこにも無い」との事でキッチリ5万入った私名義の通帳を返してもらい、あとは服だけカバンにつめて持って出ました、
その日妻は子供を連れて友達と3人でピクニックに行くと言い、朝からお弁当ボックスを作り出かけてしまったので、ひとりで出て鍵を閉めてその鍵はドアのポストに入れました(指示どおり

二週間後くらいに書類の用事でアパートによりました、しばらくぶりの我が家の玄関先でした、クリスマスの時期だったので子供のプレゼントのような包みが玄関奥に置いてありました、
あまりヒト(他人)の部屋の中を覗くなと言われてしまいました、あわてて下を見ると、僕よりもサイズの大きい男もののスニーカーと靴が雑に転がっていました、既に新しいお父さん風情(ふぜい)がいる様子でした
わたしは目の前が徐々に白くぼやけ、ワケもわからずグイグイ引っ張り回されるような中に今までずっといたような感覚がしました、

その中で最後に見たあなたは相変わらず
奔放で、明るくて、器用で、笑顔は屈託のないものでした、
とくに私が子供と今生の別れとも言っていいくらいの言葉を交わしている時のあなたのケタケタとした笑い声は忘れられるものでは、ありません