インフレ目標は断念すべきか 「2%」設定は雇用に劇的効果、財政問題解消のメリットあり
https://www.zakzak.co.jp/soc/amp/180623/soc1806230002-a.html

 インフレ目標の下限を設定するのはデフレを放置しないためだ。そして上限は金融緩和で失業率を下げたいが、やりすぎて必要以上にインフレ率を高くしないように設定する。

 このようにインフレ目標を理解していれば、失業率が下がって雇用環境が良くなっているのにインフレ率が上がらない、という状況は、それほどまずくないことがわかるだろう。

 こうした事情から、日銀は2%のインフレ目標を引き下げる必要はない。インフレ率が上がらないことの国民経済上の弊害はほぼ皆無のうえ、財政再建ができるというメリットがあるからだ。

 日銀のインフレ目標2%はそれなりに効果もある。白川方明(まさあき)前総裁時代の2008年4月〜13年3月までと、黒田東彦(はるひこ)日銀の13年4月〜18年3月までを比較してみよう。

 インフレ率2%との差は、白川時代に▲2・3%だったが、黒田時代は▲1・5%だった。

 インフレ率2%からの乖離(かいり)としてインフレ率と2%との残差平方和の平方根(標準偏差の類似概念)をみると、白川時代は「2・5」だったが、黒田時代は「1・6」となっており、黒田時代はインフレ率2%から外すことが少なくなっている。

 ただ、米英では、インフレ率2%との差はほぼゼロ、2%との乖離は「1・0」程度なので、黒田日銀のパフォーマンスは米英からは一歩劣っている。

 それでも、失業率は劇的に改善したので、「2%」の目標を設定した効果はあったと見るべきだ。

 しかも、日銀が市場から国債を買っていて、インフレ率が上がらなければ、さらに買えることを意味する。
統合政府のバランスシート(貸借対照表)を見てもわかるが、日銀が購入した国債の利払費は、日銀納付金になるので事実上負担なしになる。この事実を見ても、財政問題が解消することが分かるだろう。