発端は廃車など産業廃棄物の山林への不法投棄だった。1980年ごろには手が付けられないほどの量になっていた。山林の地権者は200人
以上に分かれ、土地の境界もあいまい。被害者が特定できないなどの問題もあり、行政も20年近く何の手だても打てないまま“放置”されてきた。

 長年の懸案に一肌脱いだのがゴルフ場の経営会社だ。平地にもコースを持っていた同社は平地側を民間業者に売却し、その費用で山林の
地権者から土地を買収。産廃を撤去して山側にコースを移設する計画を提案した。産廃に悩まされた地権者側と市はこれに乗り、3者で2004年、
「協力して環境改善を図る」とする協定書を交わした。

 この計画について、連絡がついた地権者約107人のうち、賛成したのは71人。地権者全体の3分の1にとどまるため、協定書には「工事にあたって
地権者の同意を得ること」と明記された。ゴルフ場側は協定書を元に工事を進め、対象の23万平方メートルのうち大部分の産廃撤去を終えた。

 残るのは、土地の買収に応じなかった男性らの土地(約7千平方メートル)。見える範囲に産廃はないが、市によると地中に埋まっている可能性がある。
掘り起こして取り除き、埋め直さなければならないが、ゴルフ場側はこうした場所にも土砂を次々に入れ、男性らの土地も埋め立てられてしまったという。

 これに対し、ゴルフ場側は「協定書で総意として同意は取れており、問題ない」と反論。土砂の積み上げについては「産廃投棄前の山の形に戻し、
木々を再生させてゴルフ場にする約束。実行しているだけ」と主張する。だが、こちらは協定書に記載はない。

 協定を交わした春日市もこうした現状を問題視はするものの「利害関係者はあくまで地権者とゴルフ場。立会人という立場で参加しているだけで
市の事業でもなく、指導できる法的権限は何もない」と説明する。大量の土砂搬入は災害の危険も招きかねないため、市は苦肉の策で県土砂条例での
規制を求めるが、県は「協定書がある以上、市が指導すべきだ。地方公共団体が行う事業は条例の枠外だ」と応じていない。

 被害を訴える地権者はゴルフ場側への刑事告訴や訴訟も視野に入れる。今のところ解決の糸口は見えない。

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