富野由悠季「アニソンはそれ自体単体で売れないとダメなんだよ。作品に閉じ込められちゃダメ」

――当時のアニメ楽曲は、必殺技とタイトル名コールというお決まりが多い中で、富野監督は主人公の
内面描写、楽曲に作品の意図を込めるということを作詞でやられたかと思います。
『ガンダム』という“人気アニメの枠”がなくても、単体でヒットする楽曲をおふたりは目指していたわけですね。

【富野由悠季】
ただ、結局は『ガンダム』という名前に閉じ込められてしまうあたり、僕の方の詞の出し方に問題がありました。
劇伴としてはいいんだけど、アニメ好き以外の、いわゆる一般的に大ヒットする曲にならなかったので、
「ごめんなさい」と言うしかないんです。

――とはいえ、「哀戦士」「めぐりあい」は当時のヒットチャートで上位にランクインするヒット作となりました。

【富野由悠季】
そうではなくて、ヒットというのは「昭和のヒット曲100選」に入ってなければいけないんです。
確かに、キャリアが長かったから作詞家としてもそれなりに見えます。けれど、『エヴァンゲリオン』や『宇宙戦艦ヤマト』
のような楽曲のヒットに比べて、『ガンダム』はその規模のヒットが出ていない、と言われれば「御説ごもっとも」だとなるわけです。
職業人である以上、高いハードルを突破しなければ、作詞したとか曲を作ったとか言えません。

――しかし、劇場版ガンダムにおける「哀戦士」「めぐりあい」「ビギニング」、そして『ターンエーガンダム』の「月の繭」など、
“シーンを見れば誰もが頭に思い浮かべる楽曲”を生み出した点において、井荻麟作詞による楽曲のインパクトは絶大です。