「絵」を「現実」と誤認させる「東のエデン」の入れ子構造【懐かしアニメ回顧録第52回】

2019年4月1日から、神山健治と荒牧伸志、2人の監督による3DCGアニメ「ULTRAMAN」のネッ
ト配信がスタートする。
神山健治監督の原作・シリーズ構成による作品といえば、ちょうど10年前に放送された「東のエデン」(20
09年)。就職を控えた大学生の森美咲が、滝沢朗という記憶喪失の青年にアメリカで助けられ、日本の運命を
めぐる策略に巻き込まれていく。

第1話「王子様を拾ったよ」では、ホワイトハウスの前で出会った咲と滝沢が、東京がミサイル攻撃を受けたこ
とを知るまでを描いている。
この時点で、2人はまだアメリカにいるため、ミサイル攻撃のニュース映像を空港のモニターで見ている。第2
話で、飛行機の中から攻撃の跡を咲と滝沢は目撃することになるが、「東京がミサイル攻撃された」という重大
な事実を、どうしてモニター内で提示するのだろう? 飛行機に乗った咲と滝沢が、ミサイルが東京に着弾・炎
上する現場を間近に見たほうが、よほどインパクトが出るのではないだろうか?

ニュース映像とはいえ、しょせん「絵の中の絵」である

まず、この作品は10発ものミサイルによって東京が攻撃された“迂闊な月曜日”事件を背景にスタートしてい
る。“迂闊な月曜日”が、2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件(9.11)をヒントにしていること
は明らかで、作中でも9.11について明確に言及されている。
つまり、(番組放送時から計算すると)8年前に実際に起きたテロ事件と地続きの世界で、「東京がミサイル攻
撃された」という大きなウソをつかねばならないわけだ。“迂闊な月曜日”は、“ルウム戦役”や“セカンドイ
ンパクト”とは、フィクションの次元が違う。視聴者にとって生々しい事実として描写する必要がある。
ほとんどの視聴者は9.11をニュース映像で見ているため、東京へのミサイル攻撃をニュース映像として提示
すれば、現実に起きたことのように感じられることは確かだ。
しかし、アニメーションは絵である。ニュース映像とて、しょせんは「絵」なのである。モニターに映った「絵
」を提示したところで、視聴者に現実として感じられるだろうか? 絵の中の絵を、どうして我々は本物だと信
じられるのだろうか?