はじめ、世界は虚無より生じた巨躯なる神ヴァユールの手によって大まかに形作られた。
世界の創造に努めるヴァユールは、その巨躯ではこれ以上細部を形作ることはできないと悟り、自らの身体を割いて数多の神を生んだ。そしてその神々を大まかに形作られた世界へと降ろし、世界の仕上げとその後の管理を任せてヴァユールは虚空へと消えた。
太陽や月、山や海、鳥や獣。世界を構成するあらゆるものを配置し終えた神々は、世界を正常に循環させるべく自らの司る概念の運行に努めた。
神々は最も強大な力を持っていた天空神ウルによって率いられ順調に世界を管理していたが、何の変化もない世界の倦怠に厭いてもいた。
ある時、倦怠が限界に達した一柱の神が、変化を求めて自らの概念の運行を止めた。
なまじ強力な力を持っていただけにその影響は強く、他の権能にまで影響を与え波紋のように世界の乱れは拡散した。
大地は裂け海は枯れ、神々の住まう天空には大嵐と轟雷が起こった。
ウルはすぐにこの暴挙を止めるよう一柱の神に伝言を託し、この騒乱を引き起こした神の元へと送り出すが、伝言を託された神は無残にも殺されてしまう。
是にウルは激怒した。ウルは自らに従う他の神々と共に、騒乱の主である神とそれに追随する神々に戦を仕掛けた。
神々の大戦は世界が崩壊する寸前まで続いた。
このままでは世界が崩壊してしまうと危惧したウルは、自身に次いで力のあった冥府神に頼み異界を作った。
悪神たちをこの異界に追放し、異界の主である冥府神の権能によって悪神たちの権能を大きく削いだ。
世界の崩壊を回避した神々は、永い時をかけて世界を修復した。そして、再び世界の崩壊が起こらないよう神々はウルの創造した異界に移住する事とした。
ウルの異界はヴァユールの世界と細い道で繋がっており、概念の運行に支障はなかったが、このまま管理を続けてもいずれまた倦怠の果てに争いを起こす神が現れるかもしれないと思ったウルは、神々の多くが去ったヴァユールの世界に自らに似せた人類を創造し住まわせた。
神々の娯楽として生み出された人類は、その思惑通り短命ゆえの目まぐるしい人生の営みで神々を楽しませ、喜びと秩序を齎した。