背景には、インターネットなどサイバー空間の主導権を中国企業または、その背後にいる中国政府に握らせまいとするアメリカ側の思惑がある。孟の逮捕は、中国の動きを阻止しようとする戦略の一環だと言える。
アメリカは何を恐れているのか。全てはこれまで中国政府がサイバー空間で行ってきた対米工作に起因する。
中国はアメリカに対して何十年も激しいサイバー攻撃を行ってきた。世界がデジタル化され、ネットワークでつながるようになった2000年頃から始まった攻撃の標的は、政府や軍の機密情報だけでなく企業の知的財産にまで及ぶ。
アメリカも中国へのサイバー工作や、ハッキング容疑者の起訴などで対抗してきた。それでも、今では20万人とも言われるサイバー軍団を持つ中国が、
これまでハッキングなどで盗み出した情報は、誰も正確に把握できないほど天文学的な量になる。
中国は、インフラなどの破壊を引き起こすような危険な攻撃は実施していない。だが、情報を盗むためにハッキングを成功させ、敵のネットワークに侵入・支配できれば、
それはすなわち破壊や妨害行為も引き起こせることを意味する。情報を盗むために電力会社にハッキングで侵入できれば、内部をコントロールすることも、大規模な停電を起こすことも可能になる。
こうした危険性があるからこそ、サイバー空間は誰かが支配するようなことがあってはならない。
それが今、中国によって牛耳られてしまう可能性が出てきており、アメリカは強く懸念しているのである。