終末期医療、お金かかる論は「素人」 専門家が誤解批判


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 「最後の1カ月間の延命治療はやめませんか?」。
人生の最終段階「終末期」をめぐって、コスト削減と結びついた発言がやまない。これを、「最近はやりの『ポピュリズム医療政策』にのせられた論」と話すのが、政府の社会保障国民会議で委員を務めた権丈善一・慶応大商学部教授(社会保障・経済政策)だ。
話は医療や介護の行く末にも及び、「費用を削減すべきだ」との論調にも疑問を呈した。

 ――文芸誌「文学界」(1月号)で、落合陽一氏と、古市憲寿氏が「『平成』が終わり、『魔法元年』が始まる」と題された対談をしました。
その中で古市氏は「お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の1カ月」と述べています。これは事実なのですか。

 「素人が医療問題に触れて最初にはまるところですね(笑)。亡くなる1カ月前の医療費は全体の3%程度だというエビデンスがあることは、この問題に関わる人はみんな知っている。
医療費の単価は全体的に上がるので占める割合は、時間が経ってもそう変わらない。急に亡くなる人も3%に含まれるので、終末期医療と呼べるのは実際にはもっと少ない。
そもそも、『最後の1カ月』は、後から考えればそうだというだけで、事前には予測がつかない。
だから、最後の1カ月の医療費を給付しないなんて、技術的にできません。授業でそういう話をすると『そうなんだぁ』と。学生は毎年、『言われてみればそうですねっ』と感心するところだね」