真の苦労はひと目につかない苦労である。
ひと目につく苦労は虚栄心さえあれば楽に出来る。


青年は熱い血によりその趣味を変えるし、老人は習慣によりその趣味を保つ。


声の調子や目つきや姿のうちにも、取捨選択した言葉に劣らない雄弁がある。


人が不正を非難するのは、そのことを憎悪するからではなく、
自分がその害を被りたくないからである。


相手の張った縄にいかにもはまり込んだような様子を見せるのが、
最たる策略である。相手を騙そうと考える時ほど、騙されることはない。


我々は、あまりに他人の前で自分を偽装するのに慣れているので、
しまいには自分の前でまで自分を偽装するようになる。


自己の腕前をひとに示さないことこそが真の腕前である。


我々自身がいだいている自信が、他人に対する信用を芽生えさす。


利口者が何か利益を引き出す余地がないほど不幸な出来事はないし、
愚か者が貧乏籤を引かずにすむほど幸福な出来事もない。


われわれの自尊心にとっては、自分の意見をこきおろされるよりも
趣味をこきおろされるほうが、いちだんと苛立たしく我慢できない。


人間一般を知ることは、個々の人間を知ることよりも容易である。


真の勇気とは、人々の前でできたことを一人のときでも実行できることを言うのだ。

ラ・ロシュフコー