「長いことトップ張ってればさあ?つらーいこともあるじゃんねえw」

うそぶく酒井。そしてサプライズとしてどのタイミングで再び姿を現すか思考を巡らせようとした時、辺りが暗闇に包まれていることに気づいた。

「なんだこれwなぁにが起こってるわけwwww」
「ここは生と死の狭間の世界。貴方は地上での役割を終え英雄として天界へ招かれる機会を得たのです」

透き通るような声に振り返ればそこには思わず手を出してしまいそうになる美女が立っていた。

「まーじか!まあ?wオフイベでユーザーの人生変えたくらいだから当然だけど?w」

無論、本来なら酒井は到底英雄の器ではない。しかし過去PSOにおいてエネミーのデザインを担当したという一点のみ、評価に値する行いがあったのだ。

「…………はい…えー……酒井、貴方の働きぶりだけれど」
「んっ!天界イキに決まってるでしょ!!!もったいぶらずに早く連れて行きなさいよぁじでw」

今でこそ表舞台から姿を消した身。だがPSシリーズプロデューサーの肩書きまで辞退した覚えは無い。
長年に渡りシリーズに携わり業界に名を轟かせるブランドを築き上げた自負がある。英雄として招かれるのは自明と言える…はずだった。

「全く褒められたものじゃねーわ。馬鹿じゃねーの?不愉快だわ」
「…え?」

突如聴こえる耳慣れた声。瞬間、肌が粟立つとともに言い知れぬ高揚を覚える。
気付くと女神の姿は消え、代わりに不遜に導かれし木村がただ静かに、しかし雄々しくそそり立っているではないか。

「ちょwww木村?wwwなにやってんのァンタwwww」
「心の痛みを知らぬ者め。今からお前を亡霊堕ちさせる」
「馬鹿じゃないのwww意味わかんないwwwwだってァタシはオフイベで心を豊かに…んっ!!!」

ズンッ!

惨めったらしく喚き散らす酒井の言葉など意に介さず、木村は過去数多の酒井を屠ってきた刃渡り25cm『神を斬獲せしもの』で酒井の肛門を穿つ。

「んっんっんっ!!!いくら木村のでも堕ちないぞ!!!!ァタシはシリーズPで!英雄で!!国王なんだ…んっ!!!!」
「喘いでんじゃねーよ!お前は亡霊だ!!冥界を彷徨うファントムだ!!!!」
「んっ!なる!亡霊になる!ファントムになる!!!!!」
「堕ちる時は俺も一緒だ」
「一緒に生きまアイイイイイ!!!!!!」

二度と這い上がれぬ闇へ堕ちる二人。しかし木村に貫かれたまま消えゆく酒井の断末魔にはどこか満たされた響きが含まれていた…。