「この世にはなんと物語の多いことか。映画、テレビ、アニメ、ラジオ…色々ある。
 人は食物を腹に収めるに酷似した貪欲さで物語を啜っている。
 人はいつだって「いい話」を求めている。餓えていた。奴等は間違いなく餓えている。
 対して、俺は書ける。だから書くのだ。奴等から搾り取らねばならぬ。怒りを、涙を、感嘆を、精液を。
 奴等が俺から物語を搾取することに対し、正当な代価を求めなければならない。
 毀誉褒貶があるべきだ。それが何よりの報酬だ。称賛、いや、非難がいい。
 理不尽な、ただ主観に則っただけの、攻撃的かつ横暴な、論理とも言えない論理で扱下ろされるのがいい。
 ありとあらゆる恣意的な言葉で攻撃しろ。最も完成度の高い部分を侮辱してのけろ。揚げ足を取れ。
 誤植を重罪として掲げろ。モチーフの選択を稚拙と嘲笑え。テーマが陳腐であると失笑しろ。
 王道を倒錯・剽窃であると言い切れ。特異さを平凡と断定しろ。丁寧さをくどさと換言しろ。全否定しろ。
 それこそが俺の復讐なのだから。奴等に感情的に叫ばせることで、俺は書く事が出来る。
 では何を書くべきか?決まっている。 名探偵ツンデレだ。」