・島サミットへ、パラオ大統領に聞く 気候変動、連帯に期待

 2021年に志摩市で開かれる太平洋・島サミット参加国のパラオでは、満潮時に海水が住宅地にまで上がってくる被害が続いている。レメンゲサウ大統領(64)は本紙の取材に、同年に友好提携締結25周年を迎える三重でのサミット開催を歓迎する一方、「パラオだけでなく南太平洋地域の重要な問題」とする気候変動への対処が議論されることを強く望んでいる。

 パラオの中心地はコロール州のコロール島で、国土の1・6%の面積にもかかわらず、全人口二万人弱の六割以上が居住する密集地だ。海に面したゼロメートル地帯にも家屋が立ち並ぶ。

 そんな土地の一つ、イケシール地区に二十五年前から住むエドワード・タダオさん(46)は「〇四年ごろから満潮時に海水が地面まで上がってくるようになった」と表情を曇らせる。

 家の前の地面が水没しないよう、昨年は砂利を敷いて三十五センチほどかさ上げしたが、それでも浸水してくるという。「そのうち家の中まで来る。沿岸部に住む人は高台に引っ越した方がいいのだが、土地がない」と嘆く。

 コロール州議会にも、沿岸部の住民から対策を求められることが増えたという。企業や店舗を他の州に分散するなど、国としての取り組みを訴える声もある。レメンゲサウ大統領は「気候変動はパラオの住民の健康、暮らし、経済すべてに影響が出る」と危機感を口にする。

 島の周囲を取り囲むサンゴ礁は防波堤の役目を果たし、さらには海外からの観光客を呼び込む重要な資源だ。だが、気温上昇で海水の温度も上がるにつれ、そのサンゴ礁が死滅する「白化現象」も起こっている。今年一月には国としてサンゴ礁に有害な物質を含む日焼け止めの販売や持ち込みを禁止するなど、大統領は「できるだけ努力して被害をなくすことを目標にしている」と話す。

 温暖化がもたらす影響を最小限に食い止めるため、一五年に採択された地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が今年から実施段階に入った。協定の実現には国際的な協調が求められるが、温室効果ガスの主要排出国である米国が離脱を通告するなど、各国の足並みはそろっていない。

 だからこそレメンゲサウ大統領は、日本がイニシアチブを取る国際会議の「太平洋・島サミットはとても大事な会議」と位置づける。「日本やパラオ、太平洋の島々で協力してプロジェクトや活動を考えていけるだろう」と連帯に大きな期待を寄せている。

 (高橋信)

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2020年5月11日 中日新聞
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