感染すると突然の頭痛や発熱、吐き気に襲われ、数時間で死に至ることもある髄膜炎。
国境なき医師団(MSF)は、西アフリカのニジェールで流行を繰り返しているはしかと髄膜炎の流行を抑え込むため、
何週間にもわたってこの国の保健省を支援している。C群髄膜炎の流行では、4月下旬に緊急対応チームをタウア県へ派遣。
地元保健当局とともに3万3600人あまりを対象に集団予防接種活動を行うとともに、感染者の救急処置も行った。

MSFは2018年初めから、ニジェール保健省の疫学的監視を国内全域で支援している。
MSFの疫学専門家ルイは、データ収集の高技能者。週ごとに集めたデータを入念に分析し、
疾病が流行するリスクのある地域の割り出しを図る。
「地域、また中央保健当局と連携し、症例報告の上がった保健区域を監視して流行警戒レベルの確認をします。
警戒水準に達した場合は報告し可能な対策の準備に入ります。
集団予防接種を実施するときは、接種率が十分かどうかの事後調査を統括します」

4月22日から27日にかけて、
MSFはタウア県ケイタ郡とボウザ郡にある合計3つの保健区域でC群髄膜炎の集団予防接種を展開し、
保健当局の流行対策を支えた。

サハラ以南のアフリカ地域担当として活動するMSF緊急援助チームの副コーディネーター、アミヌーは、
タウア県全域の髄膜炎の予防接種活動を監督している。

「予防接種をするのに必要な日数、人員、機器や動力などの計画を保健管轄局と協力して立案します。
郡の保健局とともに、実際の接種、地域社会との連携、
医療、ロジスティクスなどさまざまなチームのとりまとめを担います。
どの接種会場でも全てが円滑に運ぶように村落の代表者と話し合い、毎晩、進捗と課題を検討するのです」

病気の流行対応ではいつでも、MSFのロジスティック・チームが現場に一番乗りする。
予防接種会場の整備と、必要な物資の配備が仕事だ。

「集団予防接種の設備・物資面で最大の課題はコールドチェーン(低温輸送システム) の管理です。
何日か前に現場入りし、冷蔵設備を動かしておかなければなりません。
現場はとんでもない暑さですが、予防接種が終わるまでワクチンを2〜8℃で保管する必要があるため、欠かせない作業です」と、
ロジスティック・マネジャーのサビューは話す。

その日に必要なだけのワクチン、注射器、冷却設備、予防接種カードなどの物資を、全ての接種会場にそろえるためには、
円滑な輸送体制が要となる。タウア県の髄膜炎集団予防接種では23台の車両が投入された。

険しい土地を行くのも、チームの運転手サリフーには日常茶飯事だ。MSFのランドクルーザーで、
砂と泥と岩を乗り越え1日に200km近くを走破する。監督チームがいくつもの接種会場を訪れ巡回できるのも、そのおかげだ。
自ら接種チームの補佐に回るときもある。

「現場に着いて、仕切り用のネットを張ったり、予防接種カードに記入したりするのに手が必要そうなときは、
私が手伝っています。緊急援助で一番大切なのは、融通を利かせ、何でもこなすことです」

集団予防接種でできるだけ多くの人に接種してもらうためには、健康教育活動が大きな役割を果たす。
前日に町の広報係が街路、市場、公共施設に赴き、拡声器で地域の人びとに集団接種が行われること知らせる。

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国境なき医師団日本
http://www.msf.or.jp/news/detail/headline/adsha60000000l2g.html
続く)