オーストラリアやアメリカに、うんちを買い取ってくれている病院があるという。いったい何に使うのか

あなたのうんち、買い取ります──。まさかと思うかもしれないが、
うんちを提供すればお金がもらえる、という話は本当らしい。

オーストラリアのメディア
「news.com.au」によれば、同国の消化器病センターにうんちを提供すると、
1回50豪ドル(約4000円)の報酬をもらえる。単純計算すれば1週間で250豪ドル(約2万9000円)、
1年だと1万3000豪ドル(151万円)に上る。

うんちの需要が高まっている1番の理由は、
健康な人のうんちに含まれる腸内細菌を患者の腸に注入することで腸内環境を整える
「便移植療法」に使うからだという。

推進団体が運営するウェブサイト「thefecaltransplantfoundation.org」によれば、便移植療法とは、
「健康なドナーの便を生理食塩水などに混ぜて液状にし、フィルターでろ過した菌液を患者の腸に移植する」ことを指す。
移植には、「大腸内視鏡やS状結腸鏡などを使用するか、かん腸器」を用いるという。

■うんちもドナー不足

目的は、患者の体内で失われた善玉菌を取り戻すことだ。
抗生物質などで善玉菌が殺されてしまうと、悪玉菌、
とくに「クロストリジウム・ディフィシル」が腸内で増えすぎてしまう。

その結果、「クロストリジウム・ディフィシル感染症」(CDI)になると、
下痢や吐き気を引き起こし、死に至ることもある。

最近では腸の病気だけでなく、自閉症や難病の多発性硬化症、
慢性の下痢などの疾患にも便移植療法が使われている、と記事は指摘する。

同国の消化器病センターがうんちを買い取る背景には、ドナー不足があるという。

便移植療法への注目は確実に高まっている。同センターの消化器専門医、
トーマス・ボロデイは、1日平均10件、年間で1万2000件以上の移植を担当すると語った。

だがドナー契約を結ぶには、条件がある。
まずは本人が健康で、BMI(体格指数)が正常値であることが求められる。

さらに、食生活も健康的なものでなければならない。
ドナーは、全粒粉入りのパンやパスタ、新鮮な野菜、豆類、果物などの摂取を求められる。
逆にトウモロコシやカニ、エビ、牡蠣、サラミ、ハム、ソーセージ、抗生物質などは好ましくない。

ドナーになる手続き自体は簡単だ。申込用紙に必要事項を記入し、血液検査を受け、検便を3回すればよい。
検査をパスすれば、晴れてうんちを寄贈できる。

ドナーは、シドニー西郊ファイブドックにあるセンターの近くに住んでいる必要がある。
うんちは排便後2〜3時間以内に届ける必要があるからだ。

記事によれば、アメリカにも似たような施設があるようだ。
米非営利組織「オープン・バイオーム」は、オーストラリアと同じような値段でうんちを買い取っている。
ドナーが現地で排便してくる「ふん便バンク」も、マサチューセッツ州のボストンなどに設置されている。

ニューズウィーク日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/ni150.php