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[ベルリン 11日 ロイター] - 米国とフランスで大統領選挙を巡るハッキングが横行したことを受け、9月に連邦議会(下院)選挙を控えたドイツでは、自国が次の標的になるのではないかとの懸念が深まっている。

メルケル首相の続投がかかった9月24日の選挙まで4か月あまりとなった今月9日、ドイツの情報セキュリティ庁(BSI)は各政党に対し、コンピューターのセキュリティを強化するよう警告した。

ドイツ情報機関の連邦憲法擁護庁(BfV)のハンス・ゲオルグ・マーセン長官は4日、ロシア政府がサイバー攻撃で大量の政治関連データを収集していると非難。集めた情報を悪用して9月の選挙への干渉を試みるかどうかは、ロシア政府の政治的な判断になると指摘した。

ドイツ政府は、BSIの予算を大きく増額し、今年新たに職員を180人増員する。また、サイバー防衛センターを拡張し、民間企業との情報共有も強化している。大規模なサイバー攻撃を受けた場合に、相手のサーバーを破壊するなどの報復を可能にする法改正も検討している。

だが対策を強化したとしても、米大統領候補だったヒラリー・クリントン氏や、仏大統領に当選したエマニュエル・マクロン氏が選挙戦中に受けたようなハッキング攻撃を受けた場合、欧州最有力国であるドイツの指導者は大きな困難に直面する。専門家や連邦議会議員、官僚など10数人は、ロイターにそう語った。

情報セキュリティ研究者や米政府関係者は、米国に対する攻撃の背後にはロシアのハッカーの存在があったとみており、ロシア政府の現在の狙いはドイツだと警告している。マクロン氏のメールのハッキングの発信地については、現在も捜査が続いている。

ドイツ当局者が特に懸念しているのは、2015年にドイツ議会に対して行われたサイバー攻撃で流出したメールが、9月の選挙前にリークされることだ。関係者2人によると、攻撃された10数件のアカウントのうち、1つはメルケル首相の議会用のアカウントだった。首相の執務用メインアカウントは無事だった。

メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)のペーター・タウバー事務局長はその後、ランサムウェア(身代金ウィルス)の攻撃に遭ったと、その関係者の1人は言う。ランサムウェア攻撃では、送り付けられたウイルスがコンピューターをロックし、再開するために攻撃者に「身代金」を払うよう要求される。

「われわれは、デジタル化に圧倒されている。油断してはならない。セキュリティを強化したと言われているが、ドイツは実際には、来るものへの備えがたりない」。イスラエルのサイバーセキュリティ会社、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズで在ドイツのディルク・アレント氏はそう指摘する。
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(Andrea Shalal記者 翻訳:山口香子 編集:下郡美紀)

2017年 5月 15日 4:28 PM JST