https://www.cnn.co.jp/m/usa/35100957.html

ワシントン(CNN) トランプ米大統領が9日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官を突然解任したことに対し、政権側の意図に疑念を示す声が上がっている。

トランプ政権は解任の理由として、昨年の大統領選で民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の私用メール問題に関する捜査の不手際を挙げた。コミー氏はこの過ちにより、FBIに対する国民の信頼を損なったとしている。

しかしこの説明は、民主党から冷笑を買った。コミー氏は、ロシアが大統領選に介入したとされる問題をめぐり、同国とトランプ陣営のつながりについての捜査を指揮する立場にあった。民主党はこの点に着目し、ニクソン元大統領がウォーターゲート事件の特別検察官を解任した例を引き合いに出すなど、解任の動機に疑いの目を向けている。

ホワイトハウスは、突然の解任が招く衝撃の大きさを読み違えていたようだ。政権内部の事情を知る情報筋がCNNに語ったところによると、民主党からの反発はないだろうというのが当初の予想だった。これまで私用メール問題をめぐり、民主党がコミー氏を批判してきた内容と、まさに同じ理由で解任すると発表したからだ。

クリントン氏自身もつい先日、コミー氏が大統領選の直前になって私用メール問題の捜査再開を発表したことが敗因のひとつになったとの認識を示していた。

だがそれは何カ月も前の話だ。トランプ氏がこのタイミングでコミー氏を解任すれば、背後にはロシアによる選挙介入問題の捜査を妨害する意図があったと疑われても仕方がない。そこまでは考えが及ばなかったとみられる。

捜査当局の情報筋によると、コミー氏はこの日、ロサンゼルスのFBI事務所でテレビのニュースから自身の解任を知った。その場の雰囲気を明るくしようと冗談を飛ばしてみせた後、確認の電話をかけていたという。

スパイサー大統領報道官は、トランプ氏が同日、ローゼンスタイン司法副長官からコミー氏の不手際を詳細に記した長文の覚書を受け取り、これに基づいて解任を決めたと説明した。

だが実際には、トランプ氏は少なくとも1週間前からコミー氏の解任を検討していたと、複数のホワイトハウス当局者が指摘している。

解任の発表には民主、共和両党から批判的な声が相次いだ。民主党の上院トップ、シューマー院内総務は、トランプ氏への電話で「大変な間違いだ」と伝えたことを明らかにした。

ロシアの選挙介入問題を調べている上院情報委員会を率いる共和党のバー議員は、コミー氏の解任はFBIにとっても国家にとっても「損失」だと述べ、その「タイミングと理由」に懸念を示した。委員会の調査もさらに困難になるとの見方を示した。

共和党の重鎮マケイン上院議員は、大統領にFBI長官を解任する権限があることを認めたうえで、トランプ氏の決断に「失望した」と述べた。

大統領選でクリントン陣営の責任者を務めたムック氏は、「私用メール問題ではコミー氏に対し、だれよりも大きな不満と懸念と失望を感じていた」と認める一方、「トランプ氏が解任したのは、ロシアの選挙介入やトランプ陣営の関与を捜査していた人物だ」と批判した。

コミー氏は解任されなければ、2023年まで長官を務める予定だった。FBI長官には政治的な独立性を確保するため、通常は10年という長い任期が定められている。

セッションズ司法長官がFBI職員らに送った通知によると、後任が決まるまではマッケーブ副長官が長官代理を務める。

2017.05.10 Wed posted at 20:57 JST