Yahoo!オリジナルニュース8/15(月) 9:01柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20220815-00310312

◆射撃の腕がすごい!
リョウの射撃の腕前はモノスゴイ。相手の銃を撃ち落とすくらいは朝メシ前で、コーヒーを飲んでいる敵のカップを撃ち砕いて警告を与えたこともある。

なかでも驚いたのは、ムチをピストルで撃って破断させたことだ。現実の世界でムチを振り回している人はあまり見かけないが、マンガのなかではよく悪人が使っている。その脅威はバカにならず、振り回すと遠心力で引っ張られるため、先端のスピードは相当なものになる。

作中のムチは、長さ5mほどもあり、リョウが撃ったのは、ムチの根元から2mほどの場所だった。先端からは遠いが、それでも全力で振るうとき、その場所は時速150km前後で動くと考えられる。

一方、リョウが愛用するコルト357マグナムの初速は、秒速400m=時速1440km。リョウは5mくらい離れた場所から撃ったが、弾丸がこの距離を飛ぶあいだに、ムチのその場所は50cmほど動く。

つまりリョウは「時速150kmで動く標的の位置を見定めて、その50cm先を狙って撃った」というわけだ。

しかも、ムチの直径は2cm程度。この細さでは、発砲のタイミングが0.00024秒ズレても外れてしまう。恐るべき腕と驚くほかはない。

◆オソロシイ100tハンマー
この凄腕の始末屋が、ことあるごとに股間をもっこりさせるわけである。

そのもっこり力は侮りがたく、椅子に座った状態で、テーブルを持ち上げたこともある。

ドアをもっこりでこじ開けたこともある。天井を崩壊させたことすらある。そんなリョウの不埒な行為に天誅を加えるのが、香の100tハンマーだ。

初めのうちは「10t」と書かれていたが、やがて「100t」がスタンダードになり、果ては「10万t」「無量大数t」「10万馬力」「ICBM」といったスゴイものも現れた。

オソロシすぎるハンマーだ。あの大きさで重量100tもあるとしたら、何でできているのか?

また、そんなモノで殴られたリョウはどうなってしまうのか?

マンガを観察すると、「100t」と書かれているハンマーでも、大きさはさまざまだ。

小さなものだと、ヘッド部分が直径20cm、長さ40cmくらい。巨大なものだと、直径が85cm、長さが1m7cmほどもある。

一見、大きいほうが威力はありそうに見えるが、重さは同じ100tなのだから、狭い面積にエネルギーが集中する分だけ、小さなほうが破壊力は上回る。100tハンマーは見かけによらないのだ。

この場合、密度は「大ハンマー」が1Lあたり165kg。金の8.5倍であり、もっとも密度の高いオスミウム(金属)と比べても7.3倍。

そんな物質は、地球上に存在しません! 「小ハンマー」でも1Lあたり8tで、オスミウムの350倍。 いよいよ存在しません!

……香さんは、こんなすごいハンマーをどこから持ってきたのだろう? こんなモノで殴られるとは、リョウの安否が心配である。ある回では、香は病院のベッドに座った状態から、大型100tハンマーを振り下ろした。ヘッドの落差は2mほどと思われた。

これはオソロシイ! 100tハンマーで落差2m上から叩かれるとは、リョウの体重を70kgと仮定するなら、高度2860m(富士山の7合目くらい)から、アタマを下にして落ちるのと同じなのだ!

なぜ生きていられるか、全然わかりません。「100tハンマー」ですら、この破壊力なのだ。これが「無量大数tハンマー」になると、どうなるのか。

「無量大数t」をアラビア数字で書くと

「100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000t」で、これは宇宙の全質量より10000000000000000倍も重い。

これなハンマーがあったら、完全にブラックホールとなり、リョウはもちろん、地球も太陽も、いずれは全宇宙さえ飲み込まれる。

リョウが不埒なばっかりに、宇宙が滅亡してしまうのだ。なんとオソロシイ!

『シティーハンター』は、ハードボイルドのなかに、こんな楽しい要素が同居していた。ヒジョ~に面白いマンガであった。

※一部略。リョウは「けものへん」に尞。