今回のお客様は、声優・林原めぐみさん。 「らんま1/2」の女・早乙女乱馬、「平成天才バカボン」のバカボン、「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ、「ポケットモンスター」のムサシ、「名探偵コナン」の灰原哀など、数多くの有名キャラクターを演じている、日本のトップ声優です。2月20日(土)には、書き下ろし書籍「林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力」(KADOKAWA)を出版。ご自身の誕生日でもある3月30日(火)には、歌手活動30周年を記念したベストアルバム『VINTAGE DENIM』をリリースしました
◆綾波レイは「感情がないわけではなく…」庵野監督からの指示は?

川島:「魔神英雄伝ワタル」の忍部ヒミコに始まり、「らんま1/2」の女・早乙女乱馬、「平成天才バカボン」のバカボンなど、どこか、しゃべるだけで明るくさせてくれるキャラクターのイメージがすごく強い林原さんでした。その反対にいるキャラクターと言えば、やはり「エヴァンゲリオン」の綾波レイ。

林原:そうですね。私もびっくりしました。実は、オーディションでミサトもアスカも受けていたんです。ぶっちゃけ、“アスカに手ごたえがありかな?”なんて思っていたんです。(後にアスカ役に決まった)後輩の宮村優子ちゃんも、綾波レイのオーディションを受けていたようです。でも彼女は、綾波レイ役を受けるときに、大声で「あなたは死なないわ! わたしが守るもの!」って言ったっていうから、「それは落ちるだろう」って話はしてましたね(笑)。

川島:ちなみに綾波レイは、オーディションの時点でボソボソ話してとか指示はあったのですか?

林原:一応、指示はありました。なんとなくの設定みたいなものをもらうんです。性格設定みたいな。顔と等身が描かれた資料があって、まずは自分で一声を発してみると、「もうちょっとこんなふうにやってみてください」など何度か言われて。それで、(受かったと思ったら)レイちゃんのほうだったと。別な意味でびっくりでしたけどね。“そっちか!”でした(笑)。

川島:いざレコーディングが始まったら、だいぶ感情を乗せにくいキャラクターだったのでは?

林原:乗せちゃダメだったんで。

川島:感情を乗せちゃダメ。深いですね。

林原:この話は本「林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力」に書きましたが、(庵野秀明監督からは)「感情がないわけではなく、知らないだけだから。よろしく」みたいな。あとは丸投げ(笑)。

川島:監督はそう言うでしょうけど。

林原:うん。すごく普通の顔で言ってました。

川島:感情を知らない。でも棒読みじゃダメだと。

林原:うん。“じゃあどんなしゃべり方?”って、自分でひたすら探しました。今のアニメでは、わりとクールなキャラクターも増えましたが、当時はモデルケースになる子がいなかったので、探して、探して病みましたけど(苦笑)。心理学の本を読んだり、“感情ってどこから湧くの?”とかいろいろ調べました。でも、結局たどり着いたのは単純なことで。

例えば、川島さんがすごく好きな女の子からバレンタインにチョコレートをもらったら、「うわ〜! ありがとう!」ってなる。でも、全然好きじゃないし、むしろ嫌いかも? という子からチョコレートをもらったら、「うわ、ああ……でも(一応お礼はしておかないと……)ありがとう」ってなる。要は、普通にしゃべっているつもりでも、その感情の上に“感謝”とか“嫌悪”が乗るんです。

川島:はー、深いですね。

林原:ただ(レイちゃんは)そう思ったことを言うだけ。

川島:それ以上でも、それ以下でもない綾波レイ。

林原:うん。

川島:林原さんがこれまで演じてきた役と、まったく違うじゃないですか? レイをやって気づいたことはありますか?

林原:“人って言葉通りに生きていないんだな”っていうことが、一度に見えるようになっちゃって。例えば、「忙しくてまいっちゃうよ……」って言っているけど、“売れっ子で嬉しいって思っているんだな……”とか(笑)。

川島:正直にね(笑)。

林原:そう。言っている内容は同じなんだけど(真逆の思いがある)。そんな風に人が見えるようになっちゃった。

川島:こうは言っているけど、本当は怒っているなとか。その言葉どおりには受け取らないと。

林原:うんうん。

川島:なんか、生きていくなかですごく重要なことですね。

林原:そうですね。

(TOKYO FMの番組「SUBARU Wonderful Journey 土曜日のエウレカ」放送より)

https://news.yahoo.co.jp/articles/9ceeefd7480a1a01d4bdd6d1c25d5307c29348e5