ドラクエ』魔王は「裏方」に回ることが世界征服の秘訣?

◆世界征服は目前だった?魔王デスタムーア 
『ドラゴンクエスト』(以下、ドラクエ)シリーズの魔王は(原則)世界の掌握を目的に掲げていますが、大きな野望を持つ一方、自城に構えて勇者が攻め入るまで”待機”ばかりしているイメージがあります。

「なぜ悠長に玉座に座っているのか」疑問に感じる方も多いことでしょう。しかしながら、物語の細部やセリフに注目してみると、彼らは野望を達成させるため、さまざまな策を講じていることがわかります。この記事ではシリーズのなかでも、特に狡猾で、世界征服まであと1歩だった魔王をご紹介します。

 まず、ファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、ドラクエIII)に登場した”大魔王”ゾーマ。

「アレフガルド」の大地を永遠に明けない夜の闇に閉ざした上、大地を創造した精霊「ルビス」の封印にも成功したゾーマの狡猾さは、自身の存在を最後まで表に出さなかったことに現れています。

『ドラクエIII』で地上を支配する魔王バラモスはゾーマの差し金。表向きの”ラスボス”バラモスを倒してから、やっとゾーマは姿を現すのです。

 魔王の背後に「真の魔王」が控えている設定は、今でこそスタンダードなモノになりましたが、『ドラクエIII』発売当時は斬新な展開であり、バラモスを倒して胸をなで下ろしたプレイヤーに大きな衝撃を与えました。

 狡猾さで言えば、スーパーファミコン用ソフト『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(以下、ドラクエVI)に登場するデスタムーアも外せません。

「生きとし生けるものの王」を自称するデスタムーアは世界そのものを創り出す力を持っている魔王。彼自身は自ら創り出した「はざまの世界」から、現実世界には直属の部下魔王ムドーを派遣し、多方向から着実に世界を掌握していきます。

 何より、自身の驚異となる芽を徹底的に摘み取る”用意周到さ”には目を見張るものがあります。人間の能力を開花させ、勇者を生み出す「ダーマ神殿」に、希少な武具や道具を多数保有する「メダル王の城」、究極の攻撃呪文「マダンテ」を現在に伝える魔法都市「カルベローナ」をピンポイントに壊滅させているのです。

 また、人々の夢を具現化させた上、「夢の世界」においても上記の施設を封印する徹底っぷり……。

 もとより、『ドラクエVI』で主人公一行が夢と現実、ふたつの世界を行き来できていたのは、デスタムーアの力が世界に及んでいたからでもあります。

 デスタムーアは物語が始まった時すでに、世界征服に王手をかけていたとも言えるでしょう。

◆『ドラクエ』史上最凶!「オルゴ・デミーラ」の徹底的な世界征服戦略
 前述したふたりの魔王も凶悪でしたが、歴代の「ドラクエ」で最も世界征服に近づいた魔王は、現代と過去とを行き来して冒険する、PlayStation用ソフト『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』の魔王オルゴ・デミーラではないでしょうか。

 まず、オルゴ・デミーラはゲームが始まった段階で、主人公たちが生活する「エスタード島」を除くすべての大陸を封印済み。

 長い時間をかけて分断した世界は石版に封印されており、現代に生きる人々は「自分たちの住む島以外に世界は存在しない」と信じきってしまっています。

 また、オルゴ・デミーラの世界征服は、魔物を主人公に差し向けるだけではありません。人間の”ダークサイド”を炙り出すような陰湿な施作を凝らし、人間同士が互いに憎しみあう構図を作り出す所にも狡猾さが際立ちます。

 また、ゾーマやデスタムーアと違い、世界征服に対する”執着”も桁違い。1度は過去の世界で主人公と決着がついたように思えたものの、現代に神として復活。「エスタード島」を含む重要地域を再度”入念に”封印してしまい、プレイヤーに絶望を与えるのです。

 バトルにおいてもオルゴ・デミーラは、自身の姿を”ドロドロ”のゾンビ(第四形態)にさせてまで主人公に歯向ってきます。

 用いた手段の狡猾さに加え、野望達成までの執念に最後まで焦がれたオルゴ・デミーラこそ、世界征服に一番近かった魔王と言えるのではないでしょうか。

マグミクス2021.04.06
https://magmix.jp/post/50952