寄付者の名は「キンダイチ コウスケ」(金田一耕助)−。西日本豪雨で被害を受けた岡山県倉敷市真備町は、小説家横溝正史(1902〜81年)の戦時中の疎開先で、作品を執筆したいわば「名探偵」のふるさと。豪雨では、イベント用の衣装や小道具を保管していた市の施設も浸水した。ゆかりの品々を復元しようと、地域の有志が「金田一募金」を呼びかけたところ、小説の登場人物の名を借りた寄付が相次いでいる。「エドガワランポ」「アガサ クリステイ」といった“大御所”の名も。ミステリーファンの遊び心が、支援の輪を広げている。

 横溝は45年から3年あまり、真備町岡田地区(当時の岡田村)に疎開し、「本陣殺人事件」「八つ墓村」などを執筆。周辺には小説の舞台として登場する駅や池があり、横溝ファンの聖地とも呼ばれる。これまで作品の登場人物に扮してゆかりの地を巡るイベントなどを毎年開いていた。

 豪雨では、町の3割近くが浸水。横溝が疎開した民家は水害を免れたが、真備公民館岡田分館に保管してあったイベント用の金田一耕助の衣装約30着や小道具約50点などが泥にまみれた。

 金田一ファンで、岡田まちづくり協議会メンバーの川崎修さん(39)が発起人となり、ツイッターを中心に募金を開始。匿名での参加を呼び掛けたところ、キャラクターの名を借りた寄付が相次いだ。作家の綾辻行人さんがリツイートするなど、活動が拡散している。

 断然多い名は、やはり金田一耕助シリーズから。川崎さんは定期的に取引履歴明細証明書をツイッターで公開。「辛いことがあった時、明るい笑いが大切」「募金の新しい形」といったコメントが並ぶ。「来月は誰の名前にしようか」など、7月30日時点で延べ200人以上、約150万円が集まった。

 実家の1階部分が浸水した川崎さんは「リピーターも多く予想外の反響。遊び心が僕らの力になっている」と強調。「知られていない登場人物を漏れがないよう紹介できるか、発起人の腕の見せ所です」と意気込んでいる。

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 寄付に名前を連ねた金田一耕助以外の小説キャラクターは次の通り。(一部、川崎さんへの取材分)

 磯川常次郎(岡山県警警部)▽等々力大志(警視庁警部)▽田治見要蔵(「八つ墓村」)▽スケキヨ(「犬神家の一族」)▽一柳賢蔵(「本陣殺人事件」)▽鬼頭早苗(「獄門島」)▽青池歌名雄(「悪魔の手毬唄」)

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