フランス、産む国へ100年の執念
今世紀中にドイツの人口を逆転
欧州での男女対等と個人の自由とは?

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欧州の福祉大国フランスとドイツが、少子化対策で明暗が分かれている。フランスは2016年、合計特殊出生率(女性が一生に生む子供の数の平均)が1.92で、5年連続で欧州連合(EU)の首位を維持する一方、ドイツは1.60で追い上げに奮闘中。
現在の人口は欧州最大だが、国連推計では今世紀中にフランスに抜かれる見込みだ。
両国の違いはフランスは男女対等、ドイツは男性優位のお国柄のため。(2018年 三井美奈)

子ども、最優先のフランス

フランスの合計特殊出生率は1993年に1.66に落ち、2006年に2.00に戻った。OECD(2013)統計で国内総生産(GDP)に占める家族給付支出は3.65%。北欧と並んで先進国トップクラスで、日本(1.49%)の倍以上だ。

とにかく女性に産んでもらい、国が支える〜というのが保守革新を問わず、歴代政府の立場。育児支援は予算の「聖域」扱い。2008年の金融危機後、北欧などほかのEU諸国と同様に出生率が下がると「フランス『特例』の終わりか」(ルモンド紙)、「危険な減少」(レゼコー紙)などと大騒ぎだ。

日本とフランスの大きな違いは、「3歳まで親が育てないと悪影響が出る」という「3歳児神話」が希薄なこと。パリの保育園長は「男女格差がなくなり、女性の出世競争も激化したので、育休をとらず、産後2〜3カ月で預ける母親が多い」と話す。昼の公園では肌の色の違う移民出身シッターたちが乳幼児をあやす。

月900ユーロ(約12万円)のシッター費の半分は補助金が出る。育児手当は3人で月299ユーロ(約4万円)。年収約4万2千ユーロ(約550万円)で所得税は870ユーロ(約11万円)だから、たっぷりおつりがくる。

隣国ドイツでは90年代、合計特殊出生率が1.24まで下落。メルケル首相は2005年の就任後、7人の子供の母フォン・デア・ライエン家庭相(現EU委員長・元国防相)を起用し育児支援に本腰を入れた。

保育所不足は、日本並みに深刻だ。18年5月にはベルリンで母親ら約3500人が抗議デモを行った。「妊娠中、保育所を予約しに行ったら『400人待ち』と言われた。入るのは至難の業だからだ」