1月6日(水)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・多事奏論

編集委員 高橋純子    記事バラ売り時代  悩み抜く 「スカッと」なくとも

2カ月ほど前、ある女性読者(60)のご自宅を訪ねた。年に数回、私が書いた記事への
長文の批判を、その記事の文体に似せて自筆でつづり、ファクスで送ってくれる。
保守を自認されているその筆は辛辣だが、しっかり読み込んだ上で書かれていることが
わかる。どんな人なんだろう?

――あの、どうして朝日新聞を購読してくださってるんですか?

「『敵』がこの国をどう変えたいと考えているかを勉強するためです。近所の
うどん屋さんでたまに産経新聞を読むと『あ〜生き返った!』と思うけど、
私は息抜きに新聞読んでるんじゃないから」

毎朝、赤ペンで線を引きながら読み、引っかかった箇所にコメントを書き込んでいく。
真っ赤っかになった記事の筆者には「伝えなきゃいけない」と思うから、赤いコメントを
つなげて下書きをし、それをさらに清書する。3時間はかかるという。

「書くことで、自分が何を保守したいのか、自分をより深く知ることができるよね。
ただ私も暇ではないから、『今日はそういう記事にあたりませんように』と祈るような
気持ちで新聞をめくってます」

(続く)