産経抄 12月12日

 コンビニエンスストア最大手、セブン−イレブン・ジャパンは、数々のヒット商品を世に送り出してきた。6年前にスタートした「セブンカフェ」もその一つだ。独特なデザインのマシンが、一杯ずつ豆を挽(ひ)きドリップしたコーヒーを入れてくれる。

 ▼これでわずか100円だから、人気が出るのも当然である。『セブン−イレブン 金(きん)の法則』(吉岡秀子著)によれば、こだわりはコーヒーの品質にとどまらない。あえて自販機にせず店員を通して販売するのは、「接客サービスが原点」だからという。

 ▼サービスを提供するアルバイトや従業員の労務管理もまた、コンビニビジネスの原点だったはずだ。そのあまりにもずさんな実態が発覚した。
本部が残業手当の計算を誤り、本来より少なく支払ってきた。未払い額は5億円近くにのぼる。しかも平成13年に労働基準監督署に不備の指摘を受けながら公表せず、未払い分を支払うこともなかった。

 ▼セブンといえば今年、24時間営業をめぐる加盟店との対立が、社会問題となった。スマートフォン決済「7pay」では不正利用の報告が相次ぎ、大混乱を招いた。

 ▼約40年にわたってトップの座にあった鈴木敏文氏が経営の一線を退いたのは、3年前である。カリスマ経営者の不在がトラブル続出の一因、との見方もある。ただ、未払い問題は、昭和48年の創業直後から発生していたようだ。

 ▼『セブン−イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか?』『セブン−イレブンからヒット商品が生まれ続ける理由』…。
書店や図書館の棚に並ぶビジネス本が口をそろえて成功をたたえる一方で、不祥事の種が見逃されてきた。売上高で4割超のシェアを誇る業界の王者は、大きな曲がり角を迎えている。