>>205
(続き)

 ――今年夏、韓国で国会議員相手に講演したとか。

「金大中氏没後10年。金氏が『日本の大衆文化を遮断するなんて恥ずかしいことだ』と
門戸を開いたのを援用して、日本旅行の自粛や日本製品の不買運動はやめようと
呼びかけました」

 ――「戦後最悪」の両国関係の中で、在日の方々の苦労も多いと思います。

「千差万別だと思います。その人が社会のどういったポジションで、どんな生活を
送っているのかで、だいぶ違うでしょう。それに、国同士がギクシャクしても、
国民意識は必ずしも同じではない。年約1千万人の往来で結ばれた国はまれですから」

 ――交流を下地に、やがて道は開けると。

「2002年のサッカーW杯日韓大会。あれが両国接近のピークでした。このまま
行けば日韓関係は盤石になると期待したほどです。半面、近くなりすぎて反発も
芽生えました。長い目で見ると、いまは両国が乗り越えねばいけない、ある種の段階と
みています」

「ぜひ両国民に考えてほしいのは『ある程度気楽に話せる国はどこか』です。中国、
ロシア、米国ですか。今は確かによくないけど、こうなる前で考えれば日韓でしょう。
数年前、韓国で夏目漱石の小説全集が出ました。世界中で、漱石の小説全集が読める
国は日韓だけです。両国には共感できる素地がある。だからこそ、今の状況が
もどかしいんですよね」

(終り)