11月29日

 電車の中ではほとんどの乗客が、スマートフォンの画面に見入っている。メールの返信、
ニュースのチェック、何より目立つのが、ゲームに夢中になっている若者たちである。
 ▼世界保健機関(WHO)は今年5月、「ゲーム障害」を新たに疾病と認めた。
「国立病院機構久里浜医療センター」(神奈川県横須賀市)の調べによると、スマホなど
でゲームをする男性の4割超が、平日に2時間以上も費やしていた。
ゲーム時間が長くなるほど、学業の成績が低下し、昼夜逆転の不健康な生活を送っている。
 ▼センターでは平成23年から、樋口進院長により日本で初めてのインターネット依存
の専門外来が開設されている。4年ほど前から、スマホによるゲーム障害の患者が目立つようになった。
もともとセンターは昭和38年に、日本初のアルコール依存症の専門病棟をつくったことで知られる。
患者の自主性を重んじる治療法は「久里浜方式」と呼ばれ、全国に広がった。
 ▼樋口さんによるとゲーム障害の治療は、アルコール依存症のように「断酒」というよ
うなわかりやすい手法がとれない。
「ネットやスマホは、もはや私たちの生活の一部になっているからだ」(『スマホゲーム依存症』内外出版社)。
依存が進めば、脳の神経細胞が壊れて理性的な行動がとれなくなる可能性もある。
 ▼「ネズミの楽園」と呼ばれる有名な実験がある。ネズミを2つのグループに分けて、一つのグループ
は1匹ずつ狭いおりに閉じ込める。
もう一つは広いスペースが与えられ、他のネズミとも交流できる。
前者のグループは麻薬入りの水を飲み続け、楽園のような環境にいる後者のネズミは、
普通の水を選んだ。
 ▼楽園づくりが、ゲーム障害克服のカギといえそうだ。