産経抄 7月5日

 昨年1年間に韓国からは753万9000人、台湾からは475万7300人の旅行者が日本を訪れた。多くの人が、寿司(すし)や刺し身を堪能したことだろう。ただせっかく味を覚えても、帰国すれば食べられなくなる。

 ▼韓国は、福島第1原発の事故後、福島を含む8県の全水産物の輸入を禁止してきた。日本は撤回を求めて、世界貿易機関(WTO)に提訴したものの、今年4月にまさかの敗訴を言い渡されたのは周知の通り。
文在寅大統領は、担当官を大統領府の昼食会に招いてねぎらい、“勝利”を祝った。

 ▼台湾では、水産物だけでなく、福島など5県の食品が禁輸となっている。ただ、韓国とは事情が違う。蔡英文政権は、輸入解禁に前向きだった。ところが昨年11月に実施された住民投票で、野党の国民党が提案した解禁反対案が可決されてしまった。

 ▼そこで蔡政権は、日本酒やみそなど15品目の食品の関税を引き下げる税制の改正案を提案、日本では国会に相当する立法院で可決された。
もともと日本酒は禁輸品から除外されているから、福島の酒も求めやすくなる。蔡総統は日本に誠意を示してくれた。反日一辺倒の韓国の大統領とは大違いである。

 ▼蔡氏は今年2月の小紙との単独会見で、中国の脅威を念頭に安全保障について、日本政府との対話を希望する考えを表明した。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入に向けて、協力も求めている。正式な外交関係は失われているとはいえ、大切なパートナーの訴えに耳を傾けたい。

 ▼韓国に対する半導体材料の輸出規制が、昨日から発動された。韓国の外相は「不合理な報復」と息巻いているが、これまでの優遇措置を取りやめただけのこと。こちらは、普通に付き合っていけばいい。