>>757
(続き)

ネット上の極論の流布は日本に限らない。その多くは、ごく少数の「ファン」による
ものだ。ドイツの極右政党AfD(ドイツのための選択肢)は、既存二大政党より
フェイスブック上の「ファン」が多いが、そのうち5%の声高な少数者が、
ヘイトスピーチに当たる書き込みの半分以上を書いていた。近年ドイツのメディアは
電子版のコメント欄を制限する傾向にあるが、その原因は、少数の者が極論を大量に
書きこみ、まともな意見交換ができないためだ(C)。

固定ファンに頼る傾向は、保守派だけに限らない。「週刊金曜日」の編集長や発行人
だった北村肇は、この雑誌は「リベラルを自認する高齢者の雑誌」に特化するしか
ないと述べている(D)。北村によると、これまで読者層を広げる努力をしてきたが、
実らなかったという。

だがこの方針はまずいと思う。確かに読者層を広げるのは難しい。だが固定ファン
だけに向けた言論は、必ず質が落ちる。広い読者層を意識するのとしないのとでは、
言論の緊張感と充実度が違う。

(続く)