ベトナム語で「ングォイ・ベトナム・モイ」、訳すと「新ベトナム人」となる。第二次世界大戦終結後ベトナムに残留し、第一次
インドシナ戦争(1945?1954年。以下抗仏戦争)を戦った外国人の総称である。
 この新ベトナム人の大多数が元日本軍将兵であり、総数は約600名と言われている。
 彼ら新ベトナム人は、それぞれベトナム名を持ち、ベトナム社会に溶け込んでいた。同胞として、ベトミン(ベトナム独立同盟)に
協力し、フランスの再侵略を退けることに尽くしたのである。
 フランスがインドシナの再支配を断念した1954年、彼ら新ベトナム人の多くが日本に帰ったが、ベトナム政府は彼らの抗仏戦争に
対する貢献を積極的に認め、表彰している。近年日越共同の研究が進み、日本ではジャーナリストの井川一久が詳細な研究を明らかに
した。だが今もってこの残留者たちの存在と事績は日本国内での認知が進んだとは言い難い状況にある。

 戦後ベトナムに残留した日本人はベトナム独立闘争史にいかなる足跡を残したのか? ここでは最初にベトミンの来歴を俯瞰し、次
いで二人の新ベトナム人のベトナムにおける履歴を辿って行こう。