現実に、危機は「そこ」にありますが、砂漠に頭を突っ込んでいる以上、何も見えませんから、「危機はない」と思い込んでしまうわけです。
それが戦後七〇年以上も続いてきた、今の日本の平和ボケの本質ではないかと思います。
力のある国々は、地下資源など、世界中でさまざまな権益を獲得するために、謀略を使って外国政府を転覆させたりしています。

最近、そういう行為を正当化するための“口実”として使われるのが「市場原理主義」(市場原理主義とは新自由主義グローバリズムの中核を担う理論)という言葉です。
「市場原理主義」とは、ミルトン・フリードマンというシカゴ学派の有名な経済学者が提唱したもので、
「企業がどんどん利益を追求していけば、必ず、“神の見えざる手”が市場を差配するから、うまくいく」という、少し乱暴な理論です。

二〇〇〇年代、日本国内でもかなり喧伝されました。
しかし実態は、それを実行した中南米では見事に一パーセントの超大富豪と九九パーセントの貧困層に分かれてしまうなど、非常に大きな問題が生じているのです。
八〇年代の中南米では、市場原理主義の経済理論に忠実な政策・改革がおこなわれてきました。

そして、この現状に腹を立てた人々が、あらゆるところで反政府ゲリラとなって立ち上がり、治安まで悪化しています。
今日の中南米に「反米的」と言われる政治家が多いのは、彼らが若いときにそれだけ苦労したということです。
「市場原理主義」という口実を使った資源目当ての謀略に、ものすごく苦しめられたというのが実態なのです。


P18 ■目には見えない現代の戦争の一形態、「条約」
最近になって登場しているのが、各種の「条約」です。
条約というのは、現代の戦争の一つの形態だと私は思っています。
日本であれば、少し前に議論されていた「TPP」条約が当てはまるでしょう。