長野県戸倉町から満州に入植した満蒙開拓団、信濃郷に属する松本家の長男松本勝男は、祖父、母、妹2人とともにソ連国境に近い、現在の黒竜江省の開拓地で平穏な暮らしを送っていた。
しかし、1945年(昭和20年)8月9日のソ連対日参戦により避難を余儀なくされた一家は、苛酷な避難行やソ連軍の虐殺によって祖父と母、末妹を失う。
なお、父親はこの時陸軍に召集されており、勝男のいる満州にはいなかった。苛酷な体験のあまり、自分の名前や日本語など7歳にして全ての記憶を失った勝男は、5歳であった妹のあつ子とも生き別れになり、

中国人農家に売られて酷使される日々を送ることになる。度重なる虐待に耐えかねて勝男は農家を逃げ出したものの、長春で人買いの手にかかり売られそうになる。それを助けたのは、小学校教師の陸徳志(ルー・トゥーチ)であった。
子供のない陸徳志夫妻は勝男に一心という名を与え、貧しいながらも実の子のように愛情をこめて育てる。しかし国共内戦が激化し、人民解放軍によって長春が包囲されると、一家は飢餓地獄と化した長春から脱出することを決意する