お菓子の過剰包装をなくしてほしいとインターネットで署名を集めていた東京都内の私立高校1年の女子生徒(16)が28、29日、亀田製菓(新潟県)とブルボン(同)の東京オフィスを訪れ、集まった1万8737人分の署名を担当者に手渡した。提案に賛同の声が集まる一方で、ネット上には生徒を中傷するコメントやデマが流れた。生徒は「声を上げただけで、汚い言葉でどこまでもののしる人たちがいる。血の通った人間なのに」と心を痛めつつ、「署名を機会にプラごみの削減が進んでほしい」と願った。(井上真典)

◆「高校生がでしゃばるな」
 「自分の主張を押しつけるテロリスト」「高校生が出しゃばるな」。6月4日に本紙が生徒の署名活動を報道した後、ネット上では、生徒の人格を否定する多くの中傷コメントが、掲示板やツイッターにあふれた。
 「私のような中高生が大好きなお菓子。そんなお菓子を作ってくださっている亀田製菓さんとブルボンさんにお願いがあります」
 そんな書き出しで、5月11日からオンライン署名サイト「Change.org」でお菓子の過剰包装をなくすように呼び掛ける署名活動を始めた。生徒は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響で、家庭ごみが増える中、生徒はプラスチックごみ問題について考えるようになった。

 4、5月はオンライン授業を受けるなど自宅で過ごす毎日だった。母親とプラごみの整理をしていたとき、食品を包装するごみの多さにショックを受けた。「昨日ごみを出したばかりだったのに、リビングのごみ箱は、翌日にはいっぱいに。押し込んでもすぐパンパンになった」と振り返る。特に過剰だと感じたのが、お菓子類。お菓子の袋を開けると、また個別に包装されている。トレーまでついていて「これって必要?」と疑問を感じた。
 生徒は、エコ活動に先進的な両社が、さらに環境に優しい包装作りをしてもらいたいとの思いで取り組んできた。賛否意見が分かれることは、予想していた。
 安心安全な品質を保つため個包装が必要なことは理解していたが、過剰なプラスチックをなくすよう、トレーをなくしたり、プラスチックに代わる材料を使用したりすることなどを求めていた。「個包装をすべて否定している訳ではないのに、誤解して読まれ、伝えたいことが伝わらなかった」ともどかしさを感じた。
◆「生活を崩される」危機感
 生徒には、警察沙汰にする趣旨のコメントもあった。「グリコ・森永事件を知らないのか。毒物を入れる気なら通報する」と言った過激なコメントだ。生徒の頭によぎったのは、フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演したプロレスラー木村花さん(22)が視聴者らから誹謗中傷を受けた後に死去した事件だ。
 インターネットメディアが、両社への署名提出の訪問日を掲載していたこともあり、亀田製菓やブルボンの東京オフィスに、嫌がらせに誰か来るのではないかと不安になったという。「ネット上でのやりとりが現実世界の生活を崩す怖さを感じた」と表情を曇らせた。
 心身ともに傷つきながらも、署名を提出できたのは、亀田製菓の担当者や家族らの励ましの言葉があったからだという。生徒は、ネットで炎上したことを亀田製菓の担当者に伝えると「思いは理解しているので、ネットに惑わされないでください。署名提出を楽しみにしています」とメッセージが送られた。

 署名を提出した亀田製菓では、担当者と1時間に渡って意見交換。担当者は、2030年までに全商品の包装をスリム化し、トレーをなくすなど環境に配慮する目標があることを説明。担当者は包装を小さくすることで、中身が減っていると消費者に誤解を与えてしまうことを心配していることなどを伝えた上で、「開発にリスクはあるが、署名には勇気づけられた」と話した。
 ブルボンの担当者は「プラスチックごみの削減は、全くその通りであり当社と方向性が一致するものと考えています。活動を継続していきたい」とコメントした。


長いので続きはソースで
東京新聞 2020年7月30日 15時29分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/45907