「部落差別の解消について一人一人が考える糧にしてほしい」と話す吉本洋一さん
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 部落解放同盟県連合会八代支部長の吉本洋一さん(77)=八代市=が、被差別部落の解放運動に取り組んだ43年間の歩みをまとめた本「人権 わがまちの履歴書 部落解放運動編」を自費出版した。さまざまな差別事件を取り上げ、当時の悲しみや怒り、希望といった心情も生々しくつづった。「今も残る部落差別の解消について考え、実践していく一里塚にしてほしい」と話す。

 部落解放運動に身を投じたのは33歳の時。当時の同和対策事業特別措置法(同対法)に基づく事業を申請したところ、市が「八代には対象地区はない」と認めなかったことがきっかけだった。国にも「同和対策の該当地区なし」と報告していたことが発覚した。

 仲間と7人で部落解放同盟八代支部を結成。闘争小屋を建て、国道沿いにむしろ旗を掲げ、市に同対法に基づく地区認定を求めた。問題発覚から2年かけ、市議会の地区認定採択と国の受理を勝ち取った。本ではこの闘争を詳述し「新たな課題へ向かっての転換期でもあった」と振り返った。

 地区や組織のさまざまなもめ事、後を絶たない差別事件の経緯も赤裸々に記した。「事実を記録として残したい。住民や行政職員が正しく理解し、全ての差別を解消するための人権同和教育、人権啓発の糧にしてほしい」との思いからだ。

 昨秋、母親の五十回忌を区切りに出版を決めた。中学1年の時、学校で部落差別の言葉を発した生徒を殴り、母にしかられた。やり場のない怒りに「なぜおる(おれ)ば産んだか」と責めたことを「悔やんでも悔やみきれない母への後悔の念」と記している。「(被差別部落の人たちは)難儀を抱えとらす」という口癖も紹介し、「母から授かった『諸難儀の思想』を基軸に据えた解放運動への情熱を続けていきたい」とつづった。3年前に亡くなった妻典子さんの手記なども収録した。

 B5判177ページで千部発行。千円。購入申し込みは、はがきに氏名、住所、電話番号を書き、八代市松崎町、「人権 わがまちの履歴書」編集委員会へ(送料着払い)。

西日本新聞 2019年02月26日 06時00分
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