多くの川や運河が流れる大阪市で、今も臨海部の8カ所に残る市営の渡し船を巡る“旅"が中高年らの人気を集めている。いずれも運賃無料で、順番に回っても自転車なら半日で足りる。お金は使いたくないが健康には関心がある定年後の世代にぴったりのコースで、地元もサイクリングツアーを企画するなどバックアップする。

渡し船は大阪市の河川・渡船管理事務所が運航。自治体として国内最多の航路を持ち、渡船場は天保山渡船を除くと甚兵衛渡船など残り全てが大正区を拠点に。歩行者に加え自転車も無料なのは橋の役割を担う道路との位置付けからで、主に通勤、通学や買い物客の足として2017年度は計約170万人が利用した。

最近は徒歩で回る中高年のグループから乗船の問い合わせが増え、休日にはロードバイクなどに乗るサイクリストの姿も目立つようになった。

「都会に残る昭和の風情を多くの人に知ってほしい」と地元で自転車販売とレンタル工房「ナニワ銀輪堂」を経営する中元豊仁さん(53)は今月28日に渡し船を巡るサイクリングツアーを計画している。参加費無料で、JR大正駅に集合し、渡し船を乗り継ぎながら大正区内を4〜5時間かけて一周する。途中で地下鉄工事から出た残土を積み上げたという標高33メートルの昭和山や沖縄グルメの店が並ぶ商店街にも立ち寄る。

店を始めた6年前からこうした地元の魅力を伝えるツアーを度々企画。参加者にも好評で「多いときは30人近い申し込みがある」と盛り上がりを感じている。




日本経済新聞 2018/10/15 10:32
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36481010V11C18A0AC1000/