モーセの十戒において際立っているのは、「殺してはならぬ」という戒めが、
十戒においては六番目という極めて低いところに位置づけられていることです。
モーセの十戒においてもっと重要な戒めはむしろ、神への忠誠なのです。
第一の戒めも、第二、第三、第四の戒めも、すべて神への忠誠に関するものです。
これは、神が絶対君主だからです。
したがって、例えば神がモーセやヨシュアに殺人を命令する時、
神が命令した殺人は正義になります。神の意志が正義を決定するのであって、
わたしたち人間が正義だと思っていることなど神にとっては関係ないのです。
「ここに書いてある神を神とする宗教」の信者であれば、
神の命令に従って、殺人を忠実に行うことが信者の取るべき正しい行動となります。
聖典である聖書の神自身が殺人や戦争を命令するのですから、
歴史における頻繁な宗教殺人や宗教戦争は、
聖書の教えに忠実であったがゆえになされたと考えられます。