問題の土地はスーパーの建物と広い駐車場ができているがオープンしていない=8月、熊谷市
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 熊谷市でスーパーを運営するとして県から農地転用地を取得した会社が、スーパー開業前に用地取得費の約4倍の価格で別のスーパー運営会社に転売した問題で、土地と建物が元の取得した会社に買い戻されたことが19日までにわかった。この取引は不透明な点が多く、20日開会の県議会で、自民党県議団が追及する姿勢を見せている。

 問題の土地は、同市内の約1・6ヘクタール。食品機械メーカー新井機械製作所(本社・深谷市)がスーパーを営むとして、県にスーパー用地として農地転用が認められた土地を取得。店舗は建てたが開業前の3月、スーパー運営会社ヤオコー(本社・川越市)に転売した。土地購入費と造成費で2億円余りの計画だったが、ヤオコーは土地を8億6300万円で買い取り、建物は約12億円としている。

 県と熊谷市は、農転を申請した新井機械自身がこの土地を使うよう指導。土地と建物の登記簿によると、9月10日付で新井機械が買い戻している。

 この土地取引には、元民主党衆院議員の田並胤明氏(85)が関わり、土地所有権が移転されたことについては「悪意はなく錯誤だった」と話していた。

 朝日新聞が情報公開で入手した熊谷市の打ち合わせ記録などによると、田並氏が2014年10月に県担当課を訪問。同12月にはヤオコー担当者も実際の事業者として市の打ち合わせに参加し、15年6月にはヤオコーに所有権を移転することを前提に議論も行われていた。

 また、この土地は開発が原則認められないが、それを可能にしたのは「公共移転」という制度。新井機械は山形県米沢市に土地を所有していたが、一部が東北中央自動車道用地となった。同じ事業を継続する目的で認められる公共移転として、特例的に熊谷市での土地取得と農地転用が認められた。新井機械が熊谷市に提出した文書では、米沢市でせんべい工場と「一体の店舗施設」を営んでいたと説明している。

 熊谷市は、公共移転の対象であることは確認したが、どんな店舗だったか移転前の図面などを取り寄せて実態を確認するまではしていなかった。

 自民党県議団が、一連の経緯について10月5日からの県議会常任委員会で追及する姿勢だ。(長谷川陽子、松浦新)

朝日新聞デジタル 2018年9月20日15時13分
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