御殿燈篭を担いで練り歩く家は制作費が高くつくなどの理由で年々減少。20年ほど前は60〜70軒が行っていたが、今年はわずか11軒のみであった=宇佐市長洲
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以前は各家の墓前で燈篭に火が放たれていたが、5、6年前からは墓地の中央にある空き地で行われるようになった=宇佐市長洲
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 日本人にとって「お盆」というのは特別で大切なもの。迎え火や送り火を焚(た)き、盆踊りを舞うなどしてご先祖様の霊を厳かに供養される方も多いだろう。ところが宇佐市の長洲地区では、毎年8月15日に一風変わった盆の祭礼行事が継承されている。

 鉦(かね)や太鼓に合わせ、悠然とした調子で盆口説きが大音量のスピーカーから流れる。その中を御殿燈篭と呼ばれる巨大な屋敷のような形状の燈篭を神輿(みこし)に載せて担いだ一団が、街の狭い路地をゆったりと通り過ぎていく。御殿燈篭には初盆を迎える故人の遺影が飾られているが、驚くのはその豪華さだ。

 「製作には70万円ぐらいかかっとるんじゃ」と神輿を担ぐ男性がほろ酔い加減で答えた。燈篭には金銀で縁取られた神社仏閣や五重塔などの豪華絢爛(けんらん)なミニチュアがぎっしりと載っている。昔は、「借金してでも立派な燈篭を」と言われていたという。かつて漁師町として栄えた豪快な気質の名残だろうか。

 一杯ひっかけている人が多いためか、親戚一同から構成される行列はわいわいとにぎやかだ。故人を偲(しの)んで笑って楽しく冥界へ送ってあげたい、という皆さんの優しい気持ちがよく伝わってきて、観(み)ているこちらまで和やかな気分になる。

 墓地に到着すると、もうひとつ驚きが待っていた。お金をかけた御殿燈篭に惜しげもなく火が放たれるのである。紙と木が主な材料である燈篭は、あっという間に赤い火に包まれて燃え尽きてしまった。その後、果物などの供物を満載した西方丸と書かれた小さな小舟を、近くの海に流して散会となった。

朝日新聞デジタル 2018年9月16日03時00分
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