自身も奈良県警の昇任試験の勉強に問題集を活用していたといい「こうやって出来上がるのか、と初めて知った」と振り返る。
リストには記載されていない17年3月以降も退職まで続けた。「悪と言われるならば必要悪だ。(問題集が)なくなったら後輩が困る」と開き直った。
リストには、警察庁への出向と執筆時期が重なる警察官が100人超に上る。4年間で約240万円を受け取ったとされる熊本県警の署長は、
リストの事実関係について言葉を濁したが「かつて書いたことがある」と前置きし、出向者が執筆する理由を明かした。
警察庁の官僚は昇任試験がない。加えて、法律には詳しいが実務経験に乏しい官僚は、実情に応じた試験問題を作ることができない。
このため、都道府県警からの出向者に執筆を割り振るのだという。原稿料については「所属の運営費にする上司もいたし、
(執筆者に)渡してくれる人もいた」と振り返り、「キャリアも認めているんだから問題ない」と強調する。愛知県警の部長級幹部も出向時に、
原稿料が部署の夜食代に当てられていたと証言する。最近まで出向し、原稿を書いていた福岡県警の警察官によると、
理事官から発注されるケースの他に、前任者から引き継がれることもあるという。執筆に携わるきっかけは警察庁への出向だけではない。
16年に兵庫県警を警視で退職した男性は、個人名は明かさなかったが在職時にOBから指示されたと話した。
途中でやめたいとも思ったが、後任の執筆者を見つけなければやめさせてもらえなかったという。同じ年に千葉県警を警部で退職した男性は警察署の課長だった当時、
同社とつながりがあった署長から、副署長を通じて頼まれた。「忙しくて嫌だったけど、先輩に協力しろとか、
昇任試験に挑む後輩のためにとか言われ…」と渋々引き受けたという。取材班は男性に執筆を命じた元副署長のOBにも取材したが
「何も話せない」と断られた。リストの内容を大筋で認めた神奈川県警の元警視の男性は、警察署に営業に来た同社社長から直接、
執筆を頼まれた。無許可副業の違法性についても認識しており「まずいな、おおっぴらにはできないな」と部下にも秘密にしていたという。
ただ、執筆の頻度は増していき、13年夏からは毎月、原稿を同社に送っていた。原稿料は月に1万〜3万円で
「単純に小遣い稼ぎ。せっせと執筆した」という。取材には誠実に応じてくれたが、こうも漏らした。「余計なこと(本紙に情報提供)するやつがいるもんだ」