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出土した鎌倉時代の半地下式倉庫跡=県文化財センター提供


 ◇中世港湾遺跡 全国的に珍しく

 ◇鎌倉期文献の記載と合致

 新宮市が同市中心部で建設を計画する「文化複合施設」の予定地で出土した遺構が、鎌倉時代の文献に記載された川湊(かわみなと)「新宮津(しんぐうつ)」である可能性が高まった。
中世の港湾遺跡が見つかるのは全国的にも珍しく、県文化財センターは来年1月7日に新宮商工会議所で、シンポジウム「中世熊野の港湾遺跡新宮津を考える」を開いて発掘成果を報告し、重要性を訴える。

 遺構が見つかったのは、熊野川右岸の新宮城下町遺跡。
2016年2月以降の調査で、建設予定地(1・2ヘクタール)のうち少なくとも2200平方メートルから、
▽縄文時代
▽古墳時代初頭―室町時代
▽江戸時代――の3層の遺構が確認された。

 古墳時代初頭―室町時代の層では、半地下式倉庫跡(4・5メートル四方)が出土。
この倉庫の形状が今回、荘園から納められた年貢米を記録した1295(永仁3)年の文献「熊野山日供米(にちぐまい)配分注文」(熊野本宮大社写し蔵)に記載された「新宮津」の蔵と合致することが分かったという。

 また、敷石の上に角材を組んだ掘っ立て柱建物の様式や、風や波を避けるのに適した城山の裏に立地することも判断材料になったという。

 同センター埋蔵文化財課の川崎雅史さんは
「新宮津とみて、ほぼ間違いない。物流・交流ルートが交錯する重要な地点だったことがわかる。川湊は島根県益田市など全国でも残っているのは少なく、貴重」と話している。

 発掘調査の結果を受けて市は建設計画を再検討し、施設の配置デザインを年内にも決定する方針。

 シンポジウムでは川崎さんらが基調報告を行い、同志社大文化情報学部の鋤柄俊夫教授が「新宮城下町遺跡にみる中世都市の諸相」をテーマに講演する。
参加無料で申し込み不要、定員150人。問い合わせは同センター(電話番号省略)。


施設予定地遺構「新宮津」か
読売新聞:2017年11月28日