外部への持ち出しが禁止されている警察の内部文書が、昇任試験の対策問題集を出版する民間企業に流出していた。
出版元の「EDU−COM」(東京)はもともと、こうした非公表文書の内容を反映させる目的で、警察官に現金を渡して問題執筆を依頼していたという。
関係者は、警察官が執筆した問題や解答は「多くが内部文書の丸写しだった」と証言する。「旬の資料を含めて作成できたものから郵送した方がいいでしょうか」(現職警察幹部)
「本部長訓示等の貴重な資料をご同封いただきありがとうございます」(同社担当者)内部文書を巡って、やりとりしたメールにはこう記されていた。
緊急配備の規定や証拠物の取り扱い方法をまとめた例規集、「幹部のためのハラスメント防止対策ガイドブック」などの執務資料、法律の概要や解説が書かれた教養資料…。
内偵捜査での着眼点をまとめた警察庁通達などの取扱注意文書もあり、外部に漏れると捜査に支障が生じかねない内容が含まれていた。
警察は通達や内規の一部をホームページなどで公開しているが、実務に関する内部文書の多くは公開していない。
出版社側は問題集作成に必要な内部文書が手に入らないことから、警察官に現金を支払って問題執筆を依頼していたという。
ただ、複数の関係者は「執筆とは名ばかり。多くが通達や教養資料のコピペ(文章の切り貼り)だった」と話す。
「オウム真理教の現状に関する記述で妥当でないものはどれか」を問う択一式問題の解答では、警察官執筆の答えと、警察庁長官官房人事課発行の資料が句読点の位置まで同じだった。
論文問題にも警察庁通達の要点を抜き出した原稿が多数あり、「こつさえつかめば誰でも書ける」(関係者)。
過去の原稿の使い回しや他社の問題集を丸写ししたケースもあったという。現職時に執筆していた千葉県警OBは取材に「自分で問題なんて作れるわけがない。
警察学校の教科書を写していた」。執筆料はページ数で決まるため、字数を水増ししたこともあったという。
神奈川県警OBも「県警の教養資料を参考にしながら書いた」と話した。警察OBや市民オンブズマンの弁護士でつくる
「明るい警察を実現する全国ネットワーク」(東京)の清水勉弁護士は「そもそも他の役所が公表しているような内規や通達すら明らかにしないことが問題だ。
そうした隠蔽体質が一部の警察官の小遣い稼ぎに利用されている」と指摘した。