住民の自治力が高いとされる京都市。
町内会やその独特の「常識」は、外国人にとって時に、不可思議なものに映るようで…。

江戸時代の京都は幕府の天領で大名がおらず、お上に頼らない風土が醸成された。
「大事なことは住民で決める」という意識が根付き、
今も回覧板や祭り、国勢調査票の回収などは町内会単位で行われることが多い。

■見張られている?

6年前、上京区に引っ越してきたフィンランド人のニーナ・ハッカライネンさんは、
向かいに住む女性にあいさつで洋菓子を持参した。
女性は「近所にも同じ物を配って」。
ハッカライネンさんは意味が分からなかった。
「近所ってどこまで?なぜ違う物じゃダメなの?」と思った。

用事で帰宅が夜になると、「帰りが遅い」という声も聞こえてきた。
監視されている気がした。
だが、その戸惑いは3年前の年末、入院を機に変わった。

1週間ほどして退院すると、近所の人から
「留守が続いたから心配したよ」「大丈夫?」と次々に声を掛けられた。
「見張られていたんじゃない。見守られていた」

ご近所さんと平等に接することが、円満な人間関係につながることも分かってきた。
今では花や果物のおすそ分けをもらい、プレゼント抽選会のある毎夏の地蔵盆が楽しみになった。

昨春、ハッカライネンさんは代表を務める市民団体で外国人向けのガイドブックを作成。
その中で「町内会に入ろう」と呼び掛け、
引っ越しの際には向こう三軒両隣に菓子を持って行くよう勧める。

■連帯感が防災力に

木造住宅の密集する京の街はこれまで何度も大火に見舞われた。
教訓を生かし、防災訓練に取り組む自治会も多い。
京都産業大教授でドイツ公共放送の番組を制作する
ラジオディレクター兼記者のマルテ・ヤスパゼンさん(62)=上京区=は、そこに注目した。

ドイツでは災害時に派遣される国の技術支援隊(THW)が充実。
地震がほとんど起きないこともあり、市民参加の訓練は少なく、
1995年の阪神・淡路大震災で住民同士が助け合う姿を見て、そのわけを探っていた。

2005年に放映した地震をテーマにしたドキュメンタリー番組で、
同区の仁和小で行われた防災訓練を取材。
熱心にバケツリレーに取り組む仁和学区の住民を見て、「これが理由だったのか」と気付いたという。

「ラジオ体操や祭りに一緒に参加することで親しくなり、連帯感が生まれる」。
国勢調査など本来は行政がやるべき仕事を住民が担っている気もするが、
「いざという時に安心感も与えている」。
京都市の火災発生率は、大都市でダントツに低い。

写真:ご近所さんと世間話をするフィンランド人のハッカライネンさん(左)。
http://www.kyoto-np.co.jp/picture/2017/10/20171016094246kinjo.jpg

以下ソース:京都新聞 2017年10月16日 11時00分
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20171016000031