表紙にカバー、千葉市事業が難航 成人雑誌の陳列対策 コンビニ「対応できない」 【ちばinside】

2017年9月5日 21:14 | 無料公開
(写真)
一般誌と分けて陳列されているコンビニの成人向け雑誌コーナー(一部加工)


 成人向け雑誌をフィルムで包み、扇情的な表紙を見えなくする−。千葉市がコンビニで実施する陳列対策のモデル事業が、難航している。予定していたセブン−イレブン12店舗に断られたためで、別の複数社と交渉中だが、見通しは不透明。
市民アンケートで7割を超す賛成がある一方、表現の自由が妨げられると反対の声があり、1自治体、1企業が軽々に判断できない側面がある。

◆配慮、十分でない

 市の陳列対策は、子どもへの配慮と2020年東京五輪・パラリンピックを見据えたイメージ向上策の一環。「現状(の販売方法)は国際的な感覚に照らして疑問を持たれかねない。既に一定の配慮はされていると思うが十分ではない」。今年2月、熊谷俊人市長はこう説明した。

 千葉県青少年健全育成条例で一般誌と分けて陳列するよう定めている雑誌が対象で、市は表紙を覆うフィルム4200枚の購入費など約39万円を予算化。
8、9月をめどに約2カ月間試行的に実施し、店舗の意見を聞いて本格実施を検討する予定だったが、セブン−イレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスから“拒否”された。

 千葉日報社の取材に同社の広報担当者は「(市が発表した時点で)正式な話はなかった。後日(社名を公表したことについて)市から謝罪をいただいたが、対応できないと伝えた」と回答。しかし、陳列対策を“拒否”した理由については明言を避けた。

◆表現の自由は…

 同様の取り組みは、大阪・堺市が昨年3月からファミリーマートの一部店舗で実施している。市内全店へ拡大しようと、市は本年度当初予算に80店舗で実施する経費を計上したが、12店舗にとどまっている。

 予定の80店舗で実施できていない現状に同市市民協働課は「広げていくには工夫が必要」と述べるにとどめ、こちらも成人向け雑誌へのカバーが拡大しない理由について言葉を濁す。

 背景には、憲法21条が保障する「表現の自由」がありそうだ。

 日本雑誌協会などは昨年、「公費を使った過剰な規制。表現の自由が妨げられる」と、同市へカバーの解除を求める声明を提出した。
千葉市も同協会から見解を伝えられたが、市健全育成課は「フィルムを手でずらせば表紙を見られる。表現の自由の侵害には当たらない」とする。

 現場の反応はどうなのか。あるコンビニ関係者は「表現の自由がある中、業界全体で考えなければいけない問題。個別の社で応えるのは難しいのでは」。対応に苦慮している実情がうかがえる。

◆市民は好意的

 陳列対策へ市民の反応は好意的だ。市が5月に行ったWEBアンケートでは、回答者650人中74・8%に当たる486人が賛成。反対は4・8%にとどまり、どちらとも言えないが20・5%だった。

 賛成の理由は▽成人向け雑誌をコンビニで販売してほしくない▽子どもに見せたくない▽誰もが利用する場所なので配慮が必要−など。反対意見は▽気にしすぎ▽個々の営業モデルを阻害する▽青少年の犯罪や非行につながるとは思えない−などがあった。

 同課はアンケート結果などから「店にとってもイメージアップにつながり、メリットはある」と強調。本年度中には陳列対策を開始したい考えで、実施店舗が決まれば、フィルムの色などの詳細は店側と調整した上で決めるという。

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