連結売上高約3900億円(2018年3月期)で、国内の免震・制振用装置ではシェア45%を誇るKYB。戦時中は零戦にも同社の部品が使われるなど、
高い技術力で知られる名門企業だ。ところが、少なくとも15年間にわたって検査データの改ざんを行っていたことが発覚し、
不正装置の交換費用として144億円の損失を計上している。だが、KYBの不正はそれだけではなかった。
「防衛省に対し、航空機関連部品の代金を“水増し請求”してきたのです。神奈川県の相模工場が主導する形で、
長年担当者の間では引き継がれてきました。請求の際には、本来は5カ月で終える仕事を10カ月かかったなどと作業期間や人数を過大に申告し、
実際より多くの代金を受け取っていたと聞いています」水増し請求は2015年からストップしたという。「この年の10月、
防衛装備庁発足に伴う大規模な検査がありました。検査を乗り切るために社内では、事前に不都合なデータを別のサーバーに移したり
“二重帳簿”をつけたりするなど“検査回避“が行われていたといいます」水増し請求を辞めたとされる2015年以降、
それまで10〜20%だった同部門の利益率は一気に落ち込んでいる。2014年度上期に3億8559万5000円の黒字だったのが、
2015年度上期には2億6444万9000円の赤字に転落。以降、航空機器事業部では赤字が常態化し、2018年度上期の赤字は4億6000万円を超えた。
この水増し請求が事実であれば、国民の税金を騙し取った形になる。事実関係の確認を求めたところ、KYBは「水増し請求は事実です」と回答。
検査回避についても否定しなかった。一方、防衛装備庁は「防衛省では、本件について、KYB(株)より報告を受けたところです。
これを受けまして、防衛省では同社に対して、事実関係を確認するため調査を実施する予定です。今後同社に対して厳正な調査を実施し、
その結果に応じて適切な処置を行う予定です」と回答。今回の水増し請求問題のほか、KYB副社長や執行役員の銀座高級クラブ通いなどについても、詳報している。