毎日新聞2020年4月27日 10時20分(最終更新 4月27日 10時31分)

 岐阜市寺田の路上で3月下旬、住所不定、無職、渡辺哲哉さん(当時81歳)が倒れているのが見つかり、後に死亡した事件は23日、県内の少年5人が渡辺さんへの殺人や傷害致死容疑で県警に逮捕される展開となった。渡辺さんと共に20年以上路上生活を送ってきた女性(68)は毎日新聞の取材に「容疑者が逮捕されても、渡辺さんは帰ってこない」と、命の尊厳をないがしろにするかのような犯行に、怒りをあらわにした。

 女性によると、渡辺さんは天候が悪い時でも一生懸命空き缶を拾って働く一方、図書館に通って仏教の勉強をしていたという。「勉強したことを、私にも教えてくれた」と振り返る。

 また、渡辺さんは20年前から捨て猫の世話を続けており、「猫がいるから、渡辺さんはこの場所で生活を続けていた」という。猫たちも、自転車の音で渡辺さんの帰りに気付くような仕草をみせていたといい、「猫たちは今も、渡辺さんの帰りを待っている」と悔やむ。

 捜査関係者などによると、逮捕された少年は野球を通じて知り合い、5人を含む男女約10人のグループが、事件前も複数回、渡辺さんらに投石などの暴行を加えていたとみられる。女性は「(事件後も)渡辺さんの夢を見て、眠れない日々が続いた。命は一つ。毎日毎日、なぜこうなったんだろうと考えている」と話した。【横田伸治、熊谷佐和子】

https://mainichi.jp/articles/20200427/k00/00m/040/031000c