【ワシントン清水憲司】米国際貿易委員会(ITC)は22日、中国などからの太陽光パネルの輸入急増が「国内産業に深刻な損害を与えている」と判断した。今後、トランプ大統領に緊急輸入制限(セーフガード)の発動に向けた対策案を勧告し、最終判断を求める。セーフガード発動となれば、半導体や鉄鋼、製紙など、輸入増加に苦しむ他の産業にも波及しそうだ。

 ITCは、米太陽光パネルメーカーのサニバの申し立てを受け、発動の妥当性を調査していた。11月13日までに関税引き上げや輸入枠設定といったセーフガードの具体案を勧告し、トランプ氏が発動の要否を決定する。マレーシアや中国、韓国の輸出が多いが、全輸出国を対象にすることもできる。

 セーフガードは期限を決めて輸入を制限し、その間に国内産業の立て直しを目指すもので、世界貿易機関(WTO)も容認している。米歴代政権は相手国との関係悪化や国内経済への副作用も考慮し、勧告に従わないケースが少なくなかったが、トランプ政権は国内産業保護を掲げており、発動する可能性が高いとみられている。

 トランプ政権が発動に積極的な姿勢を示せば、他産業の申し立てが相次ぐ恐れがある。反ダンピング(不当廉売)関税とは異なり、海外企業の不正行為を具体的に立証する必要がなく、国内産業が受けた損害を示せば良いため、ハードルが低いからだ。政権にとっても保護主義的な手法が新たに加わることになる。

 ただ、セーフガード発動となればパネルの値上がりを招くため、「デメリットが大きい」との声もある。パネル設置業者などでつくる米太陽光エネルギー産業協会は「パネル需要が3分の1になり、8万8000人が失業を迫られる」と反発している。

https://mainichi.jp/articles/20170924/k00/00m/020/028000c