日本の排他的経済水域(EEZ)にあるスルメイカなどの好漁場、日本海の「大和堆(やまとたい)」で6月、北朝鮮籍とみられる外国漁船による違法操業が相次ぎ、海上保安庁が巡視船の派遣を検討していることが7日、関係者への取材で分かった。大和堆では北朝鮮船が昨秋のシーズンから確認されており、日本の漁船は事故の恐れがあることなどから、現場からの離脱を余儀なくされた。

 ■日本漁船があおり

 全国いか釣り漁業協会によると、日本漁船は昨秋、大和堆で北朝鮮や中国の漁船数百隻を確認。中国船は北朝鮮側から漁業権を買い取ったとみられている。水産庁の担当者は「北朝鮮は漁業振興を図っており、その中にイカを含めている可能性がある」との見方を示した。

 日本船は今年6月上旬に現場海域へ出漁し、30隻程度が操業。中国船は確認されなかったが、北朝鮮船は昨秋と同程度の規模で集まっていたという。日本船は北朝鮮船が使用する網をプロペラに巻き込む恐れがあるため、操業がままならず、石川県の漁船などは7月上旬、北の漁場に向けて移動した。

 日本船の操業の安全を確保するため水産庁が取締船を出して北朝鮮船に対応したが、水産庁の担当者は「海上に多くいる船を排除するのは簡単ではない」と明かした。

 ■尖閣と二正面作戦

 同協会側は水産庁のほか、外務省や海保に取り締まりの強化を要請、海保はすでに大和堆上空に航空機を飛ばして現場の状況を把握している。海保は巡視船の派遣を検討しているが、尖閣諸島(沖縄県)周辺での中国公船による領海侵入に対して警備体制を強化しており、大和堆との二正面作戦を検討する必要があるという。

 海保は平成26年に小笠原諸島(東京都)周辺で起きた中国漁船によるサンゴ密漁問題でも巡視船を派遣。その際は、外国人漁業規制法違反(領海内操業)容疑で中国人船長を現行犯逮捕するなどしたが、漁船を本土に移送するために巡視船が現場海域を離れざるを得ず、体制が手薄になった経緯がある。

 海保に摘発された中国漁船側は早期釈放制度(ボンド制度)に基づく担保金を支払うなどした。

 ただ、北朝鮮漁船に支払いができるのかは不明だ。海保関係者は「慎重な検討を要するが、早めに手を打つ必要がある」としている。

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大和堆