@ 企業の本社移転
A 子育て世代が地方移住しやすい環境整備
B 東京と地方の賃金格差是正
C 地方のIT環境整備
D 国の機関の地方移転
 どれも必要かつ有効な政策だが、現実は遅々として進んでいない。
本社移転に関しては、国土交通省の「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の資料によると、東京にある上場企業375社を対象にした調査で「検討していない」が74%だった。

 地方の環境はどうか。どの自治体も企業誘致や移住者受け入れには熱心だが、雇用環境は十分とは言えない。有効求人倍率はコロナ禍で大きく低下している。2020年1月に1.49倍(全国)だったのが、10月は1.04倍まで下がった。沖縄県0.66倍、神奈川県0.75倍など14の道県が1倍を切っている(10月)。移住先として人気の山梨県も0.95倍だ。地方に関しては、閉鎖的な土地柄がネックとなるケースも少なくない。

 賃金格差は、物価水準との比較もあるので単純ではないが、最低賃金を比較すると最高は東京の1013円。最低は沖縄県、秋田県など7県の792円。1.28倍となっている。

 IT環境整備については、徐々に進んでいるが、地方での環境格差が大きい。筆者が毎年訪れる北海道のある地方では、ちょっと市街地を外れるとWi-Fiがつながらない。ある民間通信企業の調査(2018年)によると、Wi-Fi設置数が最も多い東京(2万3990)と最も少ない高知県(862)の格差は27.8倍だった。

 国の機関の地方移転に関しては、消費者庁の一部が徳島県に移転した他は、文化庁の京都移転などごく一部の移転が予定されているのみ。その文化庁の移転も当初の2021年度に間に合わず、2022年度以降にずれ込む見通しだ。

■一極集中の是正は進みそうにない

 残念ながら、こうしてみると一極集中の是正はなかなか進みそうにない。先の世論調査でも「コロナ禍を機に一極集中が緩やかになるか」との問いに76%が「穏やかにならない」と否定的な回答を寄せていた。これが現実である。

 一向に進まない一極集中是正を尻目に、一極集中リスクは高まる一方だ。進行中のコロナ禍に加え、大規模な災害や新たな感染症はいつ襲ってくるかわからない。

 国民の安心・安全と国の未来を考えるのが国会議員や官僚の仕事。一極集中・地方創生実現に向けた明快なビジョンと、誰もが納得できるような工程表を国民に示すべきだろう。こんな危機的状況下にあるにもかかわらず、国会が閉会中とは、信じがたい話である。 

https://news.yahoo.co.jp/articles/65517f0ae00c4a580ca3e161147dfb77451319e2?page=4