緊張でオレの心臓が口から飛び出しそうになる。
「ほらよっ! 大人しくしやがれ!」
 オレは水溜りの上を歩く奴らに向かって、銀色の小さな球形を放り投げる。
 銀色の小さな球形は放物線を描いて水溜りに落ちた瞬間、強烈な青白い電撃が魔物たちを巻き込んで襲い始める。
 あまりの眩い光に、オレは思わず「うっ」と声を漏らす。顔の前で眩い光を手で遮り、片目を瞑る。

「ぐぉぉぉぉん!」
 魔物らが水溜りの上で咆哮を上げながら、魔物の身体は黒こげになり黒煙を上げ、絶命したのかばたばたと横に倒れてゆく。
 電撃を食らわなかった魔物らは、一瞬何が起こったか理解できず、首を傾げてお互い顔を見合わせる。
 数秒が経ち、魔物らは仲間の死体を見つめて悲しい眼をして後退り、ぞろぞろと踵を返して樹の影に消えてゆく。
 まだ諦めてないのか、樹の影で魔物の紅い目が光っているのが不気味だった。

 オレは脱力感とともにため息を零す。
 オレはネロに振り返って、ネロの肩に手を置く。
「なんとかなったな。正直、お前の親父の発明品、馬鹿にしてたぜ」
 オレは親指を突き出す。
 ネロの親父は、ゾット帝国騎士団の科学者だ。
 よく変な物を発明しては、騎士団と親衛隊に役立っている。
 自慢げにネロは、オレとミサに親父の発明品を見せびらかす。
 秘密基地で親父の発明品を弄っては、武器を改良するのがネロの趣味とかなんとか。
 そんなんじゃ、女が呆れるぞ。いつもオレは思う。
 お前が親父の発明品を弄る時、ミサがいつもつまらなそうにしているのがわからないのかよ。