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米国政治の「パラノイド・スタイル」に治療薬なし
共和党はトランプ党なのか、大統領就任式が試金石に
2020.12.17(木)Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年12月9日付)

疑心暗鬼に陥った人間は世界を善と悪の戦いとして見る――。20世紀を代表する米国の
偉大な思想家の1人、リチャード・ホフスタッターはこう書いた。
完全な勝利に及ばないものは何であれ、パラノイアを深めるだけだ。

●1950年代の「赤狩り」の記憶
その答えが将来の米国政治の方向性を形作っていく。ホフスタッターの考察は、安心で
きる方向と心配になる方向の両方を指し示している。

 1950年代に数年にわたって米国の政治、メディア、学界、エンターテインメント業界
を震撼させたジョセフ・マッカーシーの「赤の恐怖」(反共ヒステリー)を見た後、ホ
フスタッターは「米国政治のパラノイド・スタイル」理論を打ち立てた。
選挙が盗まれたというドナルド・トランプ大統領の主張に概ね調子を合わせた今日の共
和党政治家と同じように、マッカーシーの仲間の共和党議員も、同氏の赤狩りに対する
懸念を胸のうちにとどめた。

ドワイト・アイゼンハワー大統領もその一人で、大統領の地位と第2次世界大戦での大き
な成果を武器に、酒でおかしくなったウィスコンシン州選出の上院議員と対峙しようと
しなかった。
やがてマッカーシーは行き過ぎ、その風船が1954年に割れた。