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「本来無一物」という禅の言葉があるが、それを体現するような清貧な生活の中で、多くの禅画や
漢詩、狂歌、書を遺しておる
子供とよく遊んだというのは、良寛禅師は子供の無垢なる心こそが仏の心であり、子供に学ぶ事
大いにありとしておったからじゃな

書家として引く手数多であった良寛禅師じゃが、床の間に飾られるような書の依頼はほとんど断る
一方で、子供から「タコに文字を書いて」とせがまれたときには、喜んで「天上大風」の字を大書した
という逸話が残っておる
その凧は今も残っておるそうで、北大路魯山人などもこの「天上大風」の字を好んで何度も書いた

その魯山人は良寛禅師の書をこのように評しておる
「良寛禅師は実に畏るべき美字を書きました。良寛こそうまい字であって、美しい字で良い字だと
思います。もの柔らかで、温和静寂で、有難いまでにこなれ切ったものであるが、それでも時々
途方もなく圭角の現れたものがあり、表面平穏の中に潜在する圭角の一端を発見して、私どもは、
はっと思わされることさえある」